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クリエイター名  流伊晶土
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☆オアシスと船酔い☆

 昨夜見た夢の中で、海を越えて外国へ行けと導かれたサキは、さっそくそれを実行することにした。電車で海の近くの駅まで行って、海岸の奥深くまで歩いて、1時間ほど親指を立てていた。
 一隻の魚船がサキの前に停泊してくれた。乗るかい?と聞かれたので、うなずいた。船酔いが心配だと行ったら、船長が遠い砂漠で生活する船酔い男の話を聞かせてくれた。その話を聞いているうちは、船酔いのことを忘れられた。船酔い男は、世界中で船酔いに困っている人々を助けることを仕事にしているらしい。
 3週間ほど漁船で旅するうちに、サキと船長は結婚することにした。何度か港に着くたびに船から降りるチャンスはあったのだけど、サキは船長のことが気になって降りられなかった。だけど、結婚するとは思ってもみなかった。船長がもっていた結婚届けに署名し、紙は瓶に詰めて海へ流した。
 3年が過ぎるとサキは妊娠し、女の子を産んだ。魚を捕って港で売る、という生活だったから、家計は苦しかったが、女の子はすくすくと育った。船長の足腰が弱ってきたころには、娘は立派な漁師となっていた。もう家族にはなくてはならない人物に成長していた。
「船を降ります。そんな導きの夢を見たのです」
 ある日、娘は両親にそう告げた。サキと船長は非常に悲しかったが、それを反対するつもりはなかった。サキだって、その昔、そんな夢を見て船に乗ったのだ。
「どこへ行くつもりなの?」
「大陸の真ん中にある砂漠です。オアシスのそばで暮らします」
 オアシスの水辺に魚はいるだろうか、とサキは思った。娘はずっと海で魚を捕る生活をしてきたのだ。他の生き方はできない。
 娘が旅立つ日、船長が息を引き取った。二人で、船長を海に流した。娘は母のことを心配したが、サキは微笑んで娘を見送った。
 サキと娘の話は、オアシスで暑さに苦しむ人々に語られている。聞いていると、しばらくの間、暑さを忘れるということだ。


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