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クリエイター名 |
福娘紅子 |
近未来・シリアス・冒頭部分
無人のアスファルト。シュト=ハイウェイが十字架(クロス)の影を作っていた。まるで月が地球に何かの刻印を押したようだと少年は思った。 今夜の月は紅い。 少年は膝を立てて座り直した。擦り減ったジーンズは、コンクリートの冷たさも硬さもそのままで伝えた。シャッターにもたれ掛かると、軋んで、錆びたブランコの音がした。確かにここは遊園地に似ているかもしれない。 母親が、紅い月の夜を嫌っていたのを思い出す。だが、月が出ているだけマシってもんだ。 少年はワークシャツの胸ポケットからハーパーを取り出した。店を飛び出した時、レジの横に並べてあったので数枚の札と一緒に頂戴したものだった。まだ半分は残っている。壜に直接口をつけ、金色の液体を喉に流し込んだ。乾きを癒すのではなく、暖をとる為だった。
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