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クリエイター名 |
あきしまいさむ |
HOLY? NIGHT (シュール系?? ギャグサンプル)
「あはははは!」 右隣で、洋子が更に右の男の顔を見ながらひたすら笑っていた。 しかももろに顔を指差している。 俺は心底彼を気の毒に思ったが、酔っているのでどうでもいい。 いきなり入ったバーがこれでは、彼は清算もできない。 まあどうでもいい。 飲み倒すぐらいの度胸がないのがいけないのだ。 「なんて人生だ! なんて人生だ!」 俺の後ろで津田が壁にガンガン頭を打ち付けている。 狭いし、うるさい。 「柿ピーとってよ」 「あはははは!」 「誰にいってんだよ」 「ていうか多分ないよ。」 「なんて人生だ! なんて人生だ!」 「津田うるさい」 「なんて人生だ! なんて人生だ!」 「ねえなんか柿ピー」 「なんて人生だ! なんて人生だ!」 「津田、デコ、血ィでてんぞ」 バーテンダーは俺達四人のあぶく銭にモノを言わせた奢り攻撃により、すでにカウンターの向こうに沈んでいた。 「べつに、特に悪いことはしてないよな」 と左の香奈にきくと 「ひてないひてない」 とカールズバーグをすすりながら答えた。目が淀んでる。 「あははは、あはははは!」 洋子がまだ隣席の気の毒な男の顔を指差して笑っている。うるさい。 「ヨーコ、よく飽きないねぇ」 といいつつ香奈はビールに、やたら丹念にバジルをふりかけだした。 奇異だが、無視して頷いておく。 俺はBGMが切れていることに気付いた。 「おい、誰か向こうにまわってプレーヤーかけてこいよ」 と俺がいった刹那、右からロックグラスがすっ飛んできた。 あやうくよけたが、香奈のバジル入りカールスバーグを吹き飛ばし、泡を飛ばしながら二本のグラスがカウンターのはじへ滑っていき、落ちて砕けた……音がした。 「テメエいちいち偉そうなんだよ!」 洋子が俺を見下ろしてマジギレしていた。豹変しすぎて意味がわからない。 香奈はさめざめと泣き出した。そんなにバジル入りビールが飲みたかったのだろうか。 「なんて人生だ! なんて人生だ!」 「津田うるさい」 「あはははは!」 「誰かBGMかけてくれよ」 外が明るくなりかけていた。
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