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クリエイター名  Avalon
O教授の愚痴

【O教授の愚痴】



 とある大学のとある部屋に物理学者のO教授と言う人がいる。
 少々頭が寂しくなった眼鏡と白衣が良く似合うこの教授は
愚痴を言うのが趣味じゃないかと思う位良く愚痴を言う。
「けしからん、全く持ってけしからんっ。」
 今日も彼はテレビを見ながら、口をへの字にした。
 黒い箱に嵌められたブラウン管に映るのは不気味な女。
その隅には「夏休みスペシャル 真夏の怖い話」と言う
テロップが映し出されている。
「何が怖い話だ、何が幽霊だ。そんなもの、
 人間の心理と科学で全て説明出来るのだ。
 こんな子供騙しをよくもまぁ恥ずかしげも無く放送するものだ。」
 ブチブチと、埃っぽい部屋で独り呟く教授。
と、ふいに扉を開けて女生徒が一人、中に入って来た。
 女生徒はノックもしないとズカズカと入って来た。
それを見てO教授は、
「おい君。人の研究室に勝手に入ってくるとはどう言う事だっ。」
 と叫んだ。
 だが女生徒はさらっと無視すると棚に置かれたファイルや本を調べている。
そして電源が入ったテレビを見ると、内容が厭だったのか、怪訝な顔をして
それをオフにした。
 O教授の顔と頭が真っ赤になった。
「君っ、人の話が聞こえないのかねっ!?」
 だが女生徒は本当に聞こえないのか、はたまたふざけているのか、
じっと何も映っていない黒い画面を見ていてO教授の方を向こうともしない。
 その態度に、とうとうO教授が激怒した。
「人の話を聞きなさいっ!!!!」
 おもむろに立ち上がると、女生徒の方を乱暴に掴み、グルリと反転させた。
 その瞬間、
「キャァァ!!!!」
 今までうんともすんとも言わなかった彼女が、いきなり甲高い悲鳴を上げると
O教授には目もくれずに、だっと駆け出すとその場から逃げ去っていった。
 突然の奇行に最初、O教授は呆然としていた。が直ぐに我を取り戻すと、
「全く何と言う奴だ。これだから最近の若い連中は……。」
 そう愚痴を言いながらテレビをつけた。



「ねぇねぇ知ってる?第一物理研究室の話。」
「あ〜、知ってる知ってる。あれでしょ?
 過労死したOだか何だか言う、教授の幽霊が出るって言う。
 皆怖がるからそのままにしてるんだっけ?」
「そうそう。でさ、マキがさ、
 実験の準備であそこに言ったら…”出た”んだってっ!!」
「嘘、マジで!?本当に!!」
「マジマジ超マジ。何かさ、肩ガシって捕まれたんだってっ。」
「うっわ〜、怖いわねぇ。」
「ホラーよね。それでね……



「ヘックシ!!…誰だ、私の噂をしたのは。」
 そう呟きながら、O教授は鼻を擦った。
だが直ぐにやれやれとでも言わんばかりに首を振りながら言った。
「そんな非科学的な事を言うとはな。私も焼きが回ったものだ。」
 そしてまた、先程まで見ていたテレビに目を移した。



 とある大学のとある部屋。物理学者O教授は今日も独り、愚痴を言い続けている。
 
 
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