t-onとは こんにちは、guestさん ログイン  
 
総合TOP | ユーザー登録 | 課金 | 企業情報

 
 
クリエイター名  徒野
影追い

 長く、伸びる。翻る。
 君の、影を、追って、追って。
 ……ほら。

「捕まーえたっ。」
 幼子の声が夕暮れの公園に響く。
 続いて、鈴を転がした様な笑い声。
 其の様子を見て、一人、立ち止まる。
 ヒールの有る黒いブーツがカツリと音を立てた。
 振り返る際に、地にも届こうかと云う漆黒の髪と、同色のフレアーの外套が風に舞って翻る。
 全身に漆黒を纏った御陰で、肌の白さと朱でも指した様な唇の赫さが一際目立つ。
 漆黒の瞳は懐かしげに細められ、微かに笑みを含んだ吐息が音を紡いだ。
「……影踏み、か。」
「何やの、姐さんもアレで遊んどったん、」
 すると後ろから、頭一個分位背の高い青年が姿を現す。
 落葉色の髪を獅子の鬣の様に好き方向に跳ねさせ、猫の様なアーモンド型の琥珀の瞳がきょとんとしている。
 恰好はワンサイズもツーサイズも大きいだろう白いパーカと履き込まれたジーンズだ。
 此のツーショットは余りにも釣り合わない。
 其れ処か二人に接点を見出す事さえ難しかった。
 黒衣の麗人は、微笑む。
「否……、彼の遊びをした事は無いよ。」

 ――唯、似た様な事なら。
 
 
©CrowdGate Co.,Ltd All Rights Reserved.
 
| 総合TOP | サイトマップ | プライバシーポリシー | 規約