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クリエイター名 |
徒野 |
少年の独白
『 少年の独白 』
せやかて、云うたら一目惚れやし。 センセは学校で逢うたんが初めてやと思っとる様やけど、ホンマの処俺はもっと前から知っとった。 センセが学校に来る前やから、中三の時か。 冬ん日で、練習の帰り彼の莫迦デカイマンションの広いエントランスに一人で居ったんよ。 外人さん自体はそんなに珍しゅうも無いけど、真逆自分の住んどるマンションに居るとは思いもせんかったから一寸驚いてん。 プラチナブロンドやっけ、後輩と同じ髪の色しとったんやけど下ろしとったしえらい長ぉて目立っとったわ。 何時もなら何も気にせんと通り過ぎてまうんやけど何か見入ってもうて。 センセも何処かから帰ってきた処やったんやろか、メールボックスの中を覗いとって、其ん時一寸だけ顔が見えたんやわ。 何時もの眼鏡掛けてへんかったし彼の長い髪に女顔やろ、えらい別嬪さんやなぁ思おて。 ……思おたんやけど無表情やねん、冷たい顔しとってなぁ。 幾ら別嬪でも人形さんを相手にするんは好きやないし、面白ぉないし。 其処で一回興味を失うた。 関わらんと帰ろ、思おて歩き出そうとしたら少し先の方で二三通の封筒を確認し乍歩いとったセンセの足が急に止まった。 何やろ、とか俺が思うよりも先にセンセが走り出す。 「……っ、」 エレヴェーターの方へ一心不乱に。 「速……。」 何やろ、何が有ったんやろ。 否、そんな事よりも。 「……反則やろ。」 ――ちゃんと、あんな顔で笑えるんやん。
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