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クリエイター名 |
溌麻冬鵺 |
星喰らい
わたしのすんでいるところはとてもあついしまです。しまぐにの中の、みなみのほうにあるしまに、おとうさんとおかあさんとわたしがすんでいます。すこしはなれたところに、おばあちゃんもすんでいます。おじいちゃんはいません。でもおじいちゃんは、わたしにあきをくれました。あきは白いくまのぬいぐるみです。 ある日学校にいかなくてもよくなりました。先せいはむずかしいかおでむずかしいことをおはなししていました。わたしはがっこうがお休みになったのがうれしかったけれど、おとうさんもおかあさんもかなしそうにしていました。おとうさんもおしごとにいかなくてよくなったみたいでした。わたしはみんなでどこかにいきたいとおもっていたけれど、あきをつれていってそとであそんでいました。いえをでるたびにおかあさんはしんぱいそうにわたしを見ました。そしてそのうち、そとであそんじゃだめといわれました。 わたしのすむしまからはほしがよく見えます。まい年、七夕にはみんなで空を見ます。そとであそべなくなってからはおばあちゃんのうちにいくくらいで、よるになってからはすることもありません。わたしはおばあちゃんにもらったほしぶどうをたべながら、ほしぞらを見るようになりました。よくわからないけど、そらがくらくなっているとおもいました。おとうさんとおかあさんにそういうとこわいかおをしたので、もうはなさないようにしました。 おばあちゃんはいつもすわっています。ほしぶどうばかりたべています。おばあちゃんのちかくではくろいねこがまるくなっています。わたしはおばあちゃんに、いったことのないゆきぐにのおはなしをしてもらうのが大すきでした。おばあちゃんはもともとさむいところにすんでいて、なにかのせん手だったとおかあさんからきいたことがあります。しゅ目の名まえはむずかしくておぼえていません。おもいだそうとしてはしっぱいします。このまえ、みせて、とおばあちゃんにたのむと、ここはあついからできないねえとわらっていました。あついところでしかできないきょうぎはないのに、さむいところでしかできないきょうぎがあるのはつまらないとわたしはおもいました。 おじいちゃんはわたしがようちえんにいるときになくなりました。五さいのおたんじょう日にあきをくれてすぐでした。おそうしきでわたしはたくさんなきました。おとうさんやおかあさんやおばあちゃんがしんでしまったらあんなふうにいっぱいなくとおもいます。あきはしなないけど、でもはなればなれになったらかなしいとおもいます。しななくても、あたらしくおなじぬいぐるみをかっても、それはあきじゃないからです。わたしはおばあちゃんのうちにいくときも、あきをもっていきました。おうちにかえるときはおばあちゃんが、わたしとあきのぶんといってほしぶどうをもたせてくれます。うけとるときにはすこしおおいなとか、すくないなとかおもうのに、あまったり足りなかったりすることはいちどもありません。それはおばあちゃんが、わたしのしらないまほうをつかっているからだとおもいます。そういうとおばあちゃんはわらっていました。まほうをつかえることをひとにはなしてはいけないんだとわたしはかんがえました。くろねこをかっているのがなによりのしょうこだとおもいます。 よぞらがくらくなっているのは、ほしが見えなくなっているからでした。ほしはすごく大きいというけれど、ちきゅうとぷらねたりうむのちがいもよくわかりません。ほんとうはこんぺいとうみたいに小さくて、だれかがばりばりとたべているんじゃないかとおもいます。そこでわたしははっとしました。おばあちゃんだ。おばあちゃんがほしをぶどうにかえて、むしゃむしゃとたべているのにちがいない。大はっけんです。わたしはどきどきしてねむれませんでした。 あさはやくにおきてごはんをたべると、わたしはまっすぐおばあちゃんのうちにいくつもりでした。でも、おかあさんにきょうはやめておきなさいといわれました。わたしはつまらなくなっておえかきしていました。よるにほしをさがすと、もうひとつも見つけられませんでした。 つぎの日におばあちゃんのうちへいくと、だれもいませんでした。ねこもいません。つくえにはつつまれたほしぶどうがおかれていて、そのおおさはわたしとあきへのものだとおもいました。ぶどうをもってかえって、ゆうしょくのあとにくらいそらをみながらたべていると、ぎんにひかるものがひゅーっとおちていきました。ながれぼしです。わたしはあっとこえをあげました。おばあちゃんがせん手だったしゅ目をおもいだしたからです。ふぃぎゅあすけーと。ふくろに入ったほしぶどうをこぼしてしまったのがざんねんだったけど、やっぱりぶどうは足りないなんてことにはなりませんでした。 おばあちゃんはかえってきません。ほしをたべつくしたから、あのながれぼしになってほかのよぞらへすべっていったんだとおもいます。
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