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クリエイター名 |
海崎恭介 |
よくある冒頭
●オリジナルノベル
■よくある冒頭部分
例えばここが、深い地の底だったなら――――。
ここは、小さな部屋の中。数え切れない程の精密機械が張りめぐらされた小さな牢獄みたいな部屋。 しかし、部屋の壁に小さな窓がひとつだけある。 部屋の外ではサイレンが鳴り響き、人の悲鳴が止む事なく聞こえてくる。 自分の前に立っているのは、一人の中年の男。俺の親父だ。 親父は何か喋っているが、サイレンの音でかき消され、聞き取れない。 親父の部下らしき人が報告のようなものを止まることなく知らせ続けて、親父の顔には、 ……涙……。 俺は、何が起こっているのか分からなかった。 サイレンの音は止まなかったが、親父は更に大きな声で叫ぶ。 「地球からも、増援を出すんだよ!!」 親父の部下らしき人は必死になって親父を止めようとする。 「そんな、無茶言わないで下さい!提督!!」 「地球が汚染されるのを、黙って見ているのか!!」 そう、俺は、親父のこの言葉で、この時起こっていた事態を思い出した。 それは、この星、「地球」に、巨大な隕石が接近して、それの軌道を変えさせる為に、地球の軍隊が必死になって隕石を押し出そうとしているところだった。 皆が頑張ってるのに、何故俺だけがこんな所にいるんだ。 そう思った俺は、この狭い部屋から出ようとする。 しかし、俺のその行為は、親父によって軽く止められてしまった。 「お前はここにいろ。ここにいて、この星の未来を見ろ。隕石は父さん達が絶対に止めてみせる。お前は生き延びろ!」 俺は、その言葉を聞き、部屋の奥へと戻っていった。 「よし、それでこそ俺の子だ。おい、準備はまだか!何としてもこの星を守るんだ!」 そう言って親父は部屋の外へと駆けて行った。 それが、俺が聞いた親父の最後の言葉だった――――。 隕石は、大部分が地球から反れていったが、一部がこの星に落ち、地球は核の冬が訪れた。
春、夏、秋、冬、その季節の繰り返しが何度あっただろう・・・。
俺にとってこの部屋で過ごした400年という時間は、余りにも長く残酷で・・・・・・。
例えばここが、深い闇の中だったなら、自由も孤独も知らずにすんだのに―――。
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