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クリエイター名  水野ツグミ
パステルラブリー

マジカル美少女パステルラブリー  


 青い空を見ていると、どうしようもなく正義の心がたぎってくる。  

 そんなあたしの名前は、藤ノ宮ユウカ。道徳なんてクソくらえ! な11歳で、天下無敵の小学生。

 実は、あたしには誰にも言えない秘密があるの。

 それはあたしが、街の平和を守るマジカル美少女・パステルラブリーだってこと!

 ちなみに、自分でも 「街の平和しか守らないの?」 とか思うけど、そこはそれ、ユウカ、子どもだから分かんないっ。ワールドワイドな平和に関しては、国連さん辺りにお任せしちゃうわ。

 ブドドドドッ! ブドドドドッ!

 あたしの携帯が、暴れ馬のように猛々しく震え出す。
 ポケットの中から携帯電話を取り出し耳に当てると、鼻にかかった甘い声が飛び込んできた。

「パステルラブリー、出動ですわよ! 街がモンスターに襲われてますの!」

 電話の相手は、あたしの助手であるアッキーだ。
メガネっ子かつメイド服かつ、もひとつおまけの敬語しゃべりで、大きいお兄さんの心をガッチリキャッチしてる。

 ちなみにあたしは、ツインテールのピンク髪に、黄色いリボンの王道スタイル。もちろん、たまにパンチラのサービスも欠かさない。

 いっけない、そんなこと説明してる場合じゃないんだわ。

 あたしの住んでるむねきゅん町の、累計235回目のピンチ! パステルラブリーに変身しなくちゃっ。

  あたしは「パステル変身ステッキ」を取り出して、くるくる回しながら呪文を唱える。

「まがりかどでびしょうじょとぶつかったら そのびしょうじょはおなじくらすに
てんこうしてくるのがおやくそく〜」

 そうすると光の粒が集まって、あたしの戦闘用コスチュームを形成する。ちなみに、コスチュームはひらひらミニスカで、へそちらパンチラ自由自在の無敵アイテムだ。

  顔を隠すものは何も無いのに、何故か街の人たちはあたしの正体に気付かないという、業界のお約束もばっちり踏襲してる。
 
 でも、こんなに顔をオープンにしてるのに誰もツッコんでくれないっていうのは、ある意味あたしって放置プレイされてるのかしら?

 ……なんて思わなくもない。

 いけないいけない。 すぐに考えが横にそれちゃうの、悪いクセなのよね。さあ、街を助けに行くわよっ。


 街の商店街で、巨大なモンスターが暴れてるのが見える。あれは…そう、怪獣アクリル絵の具だ。絵の具チューブに目鼻口と手足がついただけの、なんとも雑なデザインが哀れを誘う。

  あたしはそこに、颯爽と登場した。

「悪さはやめなさいっ。 このパステルラブリーが、あなたの脳漿を掻き出しちゃうわよっ!」

 11歳にしては不穏当な決め台詞を吐きながら、あたしはばっちりポーズを取る。

 と、そこにアッキーが現れた。

「あのモンスターの弱点は、目ですわ! 目を狙って攻撃するんです!」

「オウケイ、アッキー!」

 たいていどんな生物でも目が弱点よね、なんてツッコミは飲み込んで、 あたしは飛び道具の消しゴムを、モンスターの目に投げつけた。

「ッグャアアアア!!」

 見事命中! モンスターは、目を押さえてのたうちまわっている。

「やったあ!」

 あたしは、飛び上がってガッツポーズをした。

「まだですわ、パステルラブリー! 油断しないで!」

 アッキーの言葉が終わらない内に、怪獣アクリルの頭についているキャップが取れた。あっと思って身構えたけれど、遅かった。

「きゃあああ!」

 あたしは、怪獣アクリルのチューブから迸った液体を、全身に浴びてしまった。

「いやあっ、何よこれ!」

 液体が目に入らないように注意しながら、あたしはおそるおそる目を開けた。
あたしが浴びたのは、黄色のアクリル絵の具だった。刺激臭がして、気持ち悪いことこのうえない。

「もう、最低! アクリル絵の具って洗濯しても落ちないのに!」

 黄色いドロドロにまみれながら、あたしは両拳を振り下ろした。

「許さないんだから!」  

 あたしが左手を上げると、武器であるマジカルパステルがにょにょにょと伸びる。
あたしは大きく飛び上がり、パステルを怪獣アクリルめがけて振り下ろした。

「キアアアアッ!」

 先ほどの目潰しが効いているのかもともとトロイのか、 怪獣アクリルはほとんどノーガードで、あたしの攻撃を受けた。怪獣の体がよろめく。  

「今ですわ、パステルラブリー! 必殺技を!」

 アッキーの声を背に受け、あたしは10mほど飛び上がり、空中で回転した。
 さあ、一気に決めるわよ!

「わるものはしばしばたかいところからとうじょうするけど、
いちいちけなげにのぼってるかとおもうと、なんだかなけてくるわおにいちゃーん」

 あたしが伝説の呪文をとなえると、マジカルパステルがまばゆい光に包まれていく。
そのパステルで、あたしは怪獣の体に「滅」という字を大きく書いた。
まだ小学生だから、字がよれよれしているのはご愛嬌。

 字を書き終わった瞬間、「滅」の字が赤く輝いた。

「グアアアッアアアアア!」

 怪獣は、苦しそうにのたうち回る。
「滅」の字が焼けるような痛みをあたえてるはずだ。

「最後の仕上げ、いっちゃうわよー!」

 あたしは、懐からフィキサチーフスプレー缶を取り出し、「滅」の字におもいっきりフィキサチーフ液を吹き付けた。
これで怪獣にパステルで書いた文字が、完全に定着する。

「ッッッ!!」

 声にならない声をあげ、哀れなアクリル絵の具は白い光の粒になって砕け散った。

 そしてその白い光は、まるで雪のようにふわふわと、街に舞い落ちた。
  それはうっとりするくらい、美しい光景だった。

「作品ナンバー235、『白い恋人』完成!」

 あたしは、勝利のポーズをばっちり決めた。
 同時に、街の人たちの歓声があたしを包む。

「よくやりましたわ、パステルラブリー!」

 アッキーも、ご満悦のご様子。

「えへ、楽勝楽勝!」

 あたしは、アッキーとハイタッチをして喜びを分かち合った。
 今日もばっちり、町の平和を守っちゃった!
  うん、やっぱりいいことをするのって、気持ちがいい。
よく見れば商店街は半壊してるけど、そこはあたしの管轄外。 街の皆さん、復旧頑張ってねっ!

 戦闘服は駄目になっちゃったけど、もっと萌え萌えなコスチュームをアッキーに作ってもらうから、まあいいや。
 アッキー、今度はネコ耳モチーフでよろしくね!

 パステルラブリーは、今日も明日も来週も、いつでも正義の味方ですっ!
 
 
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