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クリエイター名 |
里乃 アヤ |
【雑貨屋サティーシュの不思議なアイテム】
雑貨屋サティーシュの不思議なアイテム 〜虹色の宝玉〜
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王都のメインストリートから外れた場所にある小さな雑貨屋がある。緑豊かな季節にはざわざわと茂る木々の間から木漏れ日をみることができる、小さいけど不思議な雑貨屋があるのだった―――。
その日も訪問者は特別多くなかった。しかし、そのお店の女主人はいつも嫌な顔一つせず、訪問者に無償の笑顔で迎えてくれる―――それがその店が不思議である一つの理由でもある。 そしてもう一つの理由は、彼女が訪問者に紹介するアイテムであることも忘れてはならない―――。
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その日も【サティーシュ】は太陽が一番高く昇るまで、店内はがらん、としていた。しかし、お客さんらしき人はいないけれど、木の実入り瓶の並び方や箱などがすべて整っており、しかし、そこを流れる空気は外の緩やかに木々の間を透す木漏れ日のような暖かな空気が流れていた。 入り口前のカウンターには今は誰もいなかった。 不意のお客さまが来たのはそのときである。
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「……」 表の古ぼけた、【サティーシュ】と描かれた看板を見て銀髪の初々しい顔立ちの少年―――松浪・心語は何か思うことがあり、そっと蔦の生えた扉の金属製の取っ手を握りしめた。
―――チャリン、チャリン…。 彼は突然の音にハッと身を竦め、辺りを見回した。 「……っ」 上を見上げ、それが扉の鈴の音だとわかると、とりあえず安堵し―――彼の表情に浮かべることはないが―――、店への一歩を踏み出した。 「……?」 お客は彼以外、ひとりもいないようだった。しかし、古い木々の温かみの残る棚に置かれきれいに並べられた瓶や箱の商品を見たとき、去来したものは何だったのだろうか。彼はしばらくその雰囲気にのまれながら動けなくなってしまった―――表情には出さなかったが。 「……」 ふと目に付いた入り口前のカウンターには誰もいなかった。人の気配がしないことで少し安堵しながら店内の品物を見て回って行く。 数刻ほど経ってから、彼は不思議な色合いをもつペンダントが目に入った。ペンダントの中央には鏡がついており、彼がその奥で見たものは彼であるようで《彼でない》人物がそこに映っていた。 「……!」
「…よいしょっと! あー重いわぁ」 突然無音が破られたかのように大きな荷物が地面に無造作に置かれる音ともに人の声が聞こえた。 彼は咄嗟に、声のした方向に目を向けた。店内の奥の、関係者以外立ち入り禁止の扉が開いて、両手いっぱいの大きな荷物とともにひとりの女性が入ってきたのだ。 彼が見たところ、その女性は彼と同じく銀髪で彼より幾分背も高いが透き通る肌の持ち主で、他人とは思えない《何か》を感じさせた―――それが彼女の生まれつきの魅力のひとつであったのだが。 ぐい、と女性が両手を上空に伸ばし、軽い運動をした後、店内の違和感に気づいたのだろうか、彼の方へ顔を向けた。 「…あ、お客さん、いらっしゃっていたのね。こんにちは」 それではこの女性はここの女主人なのだ―――彼は冷水を浴びせられたような軽い驚きを覚えた。 目の前にいる銀の波打つ髪の女性―――アンジェリカ・ランカスターと呼ばれるその店の女主人―――は、にっこりと笑みを浮かべながら彼を見ていた。 (…まあ、かわいらしい男の子ですわね。その割には目がしっかりしているけど…) いったい、何歳くらいなのかしらと思案していると、 「……あの…」 不意に発せられた彼の声に、アンジェリカはそれとは気づかれない程度に一瞬だけ目を見張った。 (…ずいぶんと低い声ね) 「お客さま、何かご入用のものがありますか?」 しかしその先入観を消して、いつもの包み込むような笑顔で、彼に応じた。
しかし彼は何かを言いあぐねるようにしきりにあたりを見回していた。 「……あの、ペンダント…」 そう言って、彼――松浪・心語――は先程から眺めていた不思議な七色に輝く宝玉がついているペンダントを指差した。 アンジェリカもつられて、ペンダントを見つめる。窓から入る一筋の光に反射してキラキラと光っていた。 「……きれい…」 淡々とした口調であったが、その言葉の端に彼の優しさが含まれているように感じた。 「そのペンダントはね…外見を自在に変化できるものなのよ」 松浪・心語は、一瞬だけ微かに目を見開いた。アンジェリカはその一瞬を見逃さず、優しく 目を細め、何もなかったように話を続けた。 「中央の…その宝玉石には遠い昔の賢者さまが幼い自分の顔を嫌って、大人にみせるための幻影の魔法が封じられているのよ…そのペンダントに念をこめるとその間だけ少しだけ年を経た外見を作り出せるの」 そう付け加えると、アンジェリカは彼に、どう?と微笑みかけた。 「……それ、ください」 ぽつり、と彼は言った。その店内に他のお客がいなかったから、かろうじて聞こえるくらいの小さな、しかししっかりとした低い声だった。 「そう? お買い上げありがとうございます、金貨八枚と銀貨九枚…頂きます」 彼は懐をまさぐり、おもむろにいくつかの貨幣を差し出した。
―――金貨五枚と銀貨七枚。
「…ええっと、お金…足りないのだけれど…これじゃあ渡すことはできないわねぇ」 アンジェリカは困った笑顔で彼に微笑み返した。彼は少し、慌てながら…今度は腰袋に入っているものを逆さにして全部出した。
―――古ぼけた木片や、動物の毛皮、見たことのない薬草の数々がその場に落ちた。
「……これで、いい?」 彼は腰袋にあったものをすべて、くれるというわけだった。
「えーっと…そうねぇ…」 アンジェリカは小さく苦笑しながら彼の方に振り返った。 彼の瞳が真摯に訴えているので、嘘偽りはないのだと彼女は悟った。 「ひとつ…訊いてもいいかなあ?」 アンジェリカは人差し指を顔のそばに置いて、提案を示した。彼は黙ったまま、海のように深い青の瞳で、女主人を凝視していた。 「…このペンダントを何に使うの?」
何気ない女主人の言葉に、ぴくり、と彼の肩が震えた。 「……それ、は」 そしてその一瞬、ずっと動かなかった青の瞳が揺らぐのを彼女は見逃さなかった。 (…何か…あるわね…) 辛抱強く、彼女は、目の前の、自分と同じ銀色の髪の小さな訪問者の次の言葉を待った。 店内は、静かにその時を過ごしてゆく。カウンターのそばの時計だけが絶えず、音を流してゆく―――。
店の窓の外では、梢が夕闇を伝える風によってかき鳴らされている。 「……どうしても、必要なもの、なんだ…」 それが彼から聞けた次の言葉だった。 「……それは人に迷惑をかけることなのかしら?」 アンジェリカは悲しげな笑顔で、次の質問を投げかけた。 「……それは、違うっ」 女主人の問いに、彼は真っ先に顔をあげて、大きく首を振って否定した。 言葉数は少なかったが、その態度で彼の人となりが理解できたような気がして、アンジェリカは微かに目を細め、笑顔で返した。 (このお客さんなら、このペンダントを渡しても大丈夫ね…)
女主人はスッと床に落ちている、古ぼけた木片や毛皮、薬草を手元にあった布の中に包みながら彼に微笑みかけた。 「いいわ、足りない代金はこれらを代価にします。今から、あのペンダントはあなたのものよ」 そう言い終わると、アンジェリカは包んだ布ともらった貨幣をカウンターに置いてある箱に入れて、商品の七色に光るペンダントを、松浪・心語に手渡した。 「…ペンダントの宝玉の部分を祈れば、あなたの想う姿を映せるわ。大事に扱ってね」 最後まで言った頃には、件のペンダントは彼の手に移っていた。 彼はペンダントを手に入れてからも、表情を変えることはなかった。アンジェリカを真摯な青の瞳でまっすぐに見つめて、ただ、一言、 「……ありがとう」 とだけ言うと、照れ隠しなのか、こちらを一切振り返りもせず一目散に扉に向かい、踵を返した。 (…あの子なら、きっと大切な人とか物を持っているもの…使い方を誤らないわ…) 店から出て行く姿をぼんやりと眺めながら、女主人の心は晴れやかだった。
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(……あら?あの子、さっきの) 新商品の出し入れが終わって、持ってきた箱を元の物置に入れるため、裏口から出たアンジェリカの視界の隅に、先程の少年――松浪・心語――が、そわそわと辺りを見回しているのが見えたのだった。 どうやらペンダントの宝玉を握りしめて祈っているところのようだ。 購入してから一刻も経ってない、気が早すぎやしないか。 アンジェリカは彼からは死角の位置で、内心苦笑していた。
彼女はロングスカートのポケットから一枚の紙を取り出して、柔らかく微笑んでいた。 その紙切れにはこう書いてある。 『七色に光るペンダント ・ 効果 祈るとその人が想う姿へ変化する しかし、祈った者の大切な物、あるいは人の前では変化が解ける』
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「すべてが完璧になるアイテムは、ここにはないのよ…。だってそんなものあったら…すべての民が堕落しちゃうじゃない」 【サティーシュ】にある不思議なアイテム―――それは万能的な効果はないけれども、買ってくれたお客さまに幸福を与えてくれる、そんなアイテムだった。 女主人のアンジェリカはくすくすと微笑みながら、次の訪問者を待つのであった―――。
――Fin.――
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【3434 / 松浪・心語 / 男 / 12歳(実年齢18歳) / 異界職】 【NPC / 0736 / アンジェリカ・ランカスター / 女 / 27歳 / 雑貨屋の女主人】
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はじめまして、ライターの里乃アヤと申します。 このたびは雑貨屋・サティーシュにご来店頂きとても嬉しかったです。 当店の道具(アイテム)は一長一短の特性を持つので、 キャラクターデータと照らし合わせた感じで、このような効果をもつ 道具となりましたがよろしかったでしょうか? それでは、またのご来店お待ちしています。
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