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クリエイター名  ヘタレ提督D
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『天は人の上に人を創らず、人の下に人を創らず。と言えり』とは、福沢さんも上手い事を言う。
 実際、そのとおりだ。
 人類が皆平等なら、貧富の差も、階級も、何もかも無い世界が誕生していたはずだ。未だにそんな世界となっていないのは、福沢さんの言っている事が正しいという事を示している。
 今日もだ。
 通勤のために自転車に乗ってはタイヤがパンクし、電車に乗っては人身事故で止まり、そのせいで遅刻して上司に怒鳴られ、纏まりかけていた契約も破棄された。そのオマケに減給処分まで付いてきたのは、正しく至れり尽くせりのサービスだろう。
 くそ。何で俺がこんな目に遭わなければならないんだ!
 俺みたいな平社員があくせく働いている間も、社長や専務は接待攻めの賄賂漬けなのだろう。
 エライ違いだ。とても平等じゃない。
だから、平等じゃない世界というものを見抜いていた一万円冊の人は、間違いなく日本の誇れる偉人だろう。
もっと誇れ、諸君。

 俺の振るった武器が、眼前の敵を倒した。それに伴い、周囲の仲間から賞賛の声が贈られる。
『さすがですね!』
『やりましたね!』
『お疲れです〜!』
 それぞれ平らな声ではあるが、こういう風に声をかけられると、やはり嬉しいものだ。俺も返事をしておこう。
『いや〜。皆さんのおかげですよ』
 我ながら殊勝だなぁ、とか思ったり思わなかったり。
『ヨシさんは強いんですね』
 すると、隣にいるミカさんが俺に声をかけてきた。……ああ、いつ見ても彼女はカワイイなぁ。髪型が同じ女性は、この世界に何万人もいるが、ミカさんには敵わない。
『そんな事はないです。ミカさんの協力あってこそ』
『も、もう。照れるじゃないですか〜』
ミカさんが恥ずかしがるような素振りを見せる。この面子では俺が断トツに強く、彼女の助けは大して必要無かったから嘘八百もいいところなのだが、彼女が喜んでくれたので良しとしよう。
『ヨシさんがいれば大丈夫ですね』
 誰かが言った。
そうだ、全て俺に任せておけ!

ああ、鬱だ氏のう。……いや、冗談だが。
でも、いい加減この環境がイヤになってくる。上司に怒鳴られ、借金は嵩み、痴漢の冤罪を押し付けられ。
俺が何をした? 何もしていないはずだ。
なのに、どうして。
どうして、俺がこんな目に遭わなければならないんだ。
こんな世界、平等じゃない世界だなんて、もう要らない。

そうして、俺は今日もまた敵と戦う。信頼出来る仲間と共に。
今日は、どのくらいの敵と戦い、撃退したのか。数え切れない。
俺は強い。周囲の及ばないほどに。世界最強と言っても過言ではないぐらいに。
そう。
そうだ。
俺は世界最強なのだ。俺に逆らえる者はいない。そんな事にも気付かずに俺をこき使おうなんて、百億光年早いというものだ。
……ああ、良い案を思いついた。
これから、あの上司の家に行こう。そして、俺が最強だという事を解らせてやろう。
それがいい。
武器は何でもいい。俺に命令するしか能の無いザコなど、正直、一番弱い武器である木刀でも十分だ。一分で片付けてやる。
俺は部屋に置いてあった木刀を引っ掴み、家を出た。
俺の後ろでは、パソコンのモニターが煌々と輝いている。
                                    終
 
 
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