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クリエイター名 |
アキラヤ 稔 |
オリジナルノベル:夏空
TITLE: 夏空 WRITE BY アキラヤ 稔
見上げた空は、どこまでも青く広がっていた。
けれど、今の俺にそんなことは関係なくて。 今のこの状況をどう乗り越えるか。
それこそが問題だ。
生まれて11年。今までにない大きな壁にぶち当たっている気がする。
たとえば。 この暑い日差しの中。見事に日陰がないこの道とか。 授業で水泳があったにもかかわらず水筒を忘れたこととか。 汗ダラダラになりつつ、それでも我慢して走り続けたこととか。
思い返せば、浮かんで来る数々の出来事は今この瞬間を最大の難題にするための序曲に過ぎなかったみたいだ。 後で悔やむから後悔だって。 父ちゃんが言ったてなぁ…。
そんなことを考えても、この状況から打開出来るわけではなく。
まさか。 この、まるで神様からの贈り物ではないかと思うくらい感動的なものを目の前に。
こんなに悩むことになるとは思わなかった。
――…自動販売機。
名の通り、自動で販売してくれる素敵な機械なのだけど。 けれど、それはお金を入れればの話で…。
お金を入れなければ、まるで自慢するかの如く美味しそうな飲み物を見せびらかしているだけの箱にすぎない。
「………はぁ〜〜〜〜………」
深い、溜息が出る。 もう何度目だろうか。
足下に、溝がある。 もちろんそこには鉄格子が付いていて。
水は流れていない。
照り続ける太陽で、溝の中できらりと光った……、
「……………………………俺の500円……」
なんでよりによって…。 100円ならまだ、惜しいけれども諦めがついた。
けれど、11歳の自分にとって、500円はイタイ。 手にした財布の中には、1円玉が3枚と5円玉2枚。後は10円玉が6枚入っている。
これだけでは、この神様からの贈り物のハズの箱からは何も出てこない…。
「………はぁ〜〜〜〜〜………」
見上げた空は、どこまでも青く広がっていた。
END....
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