t-onとは こんにちは、guestさん ログイン  
 
総合TOP | ユーザー登録 | 課金 | 企業情報

 
 
クリエイター名  新田透
戦闘サンプル(1000字)

 後方からエンジンの唸りと重々しい足音が聞こえた。
 振り返ると、そこにはサソリの姿をした警備ロボット[スコーピオン]がいた。
 装甲に覆われた巨大な体が橋を塞ぎ、サーチライトの光が二人を照らしている。
 エビンは背から大剣を取って構えた。ラナンは素早く後方に飛んで敵と距離をとり、
拳銃で敵を撃った。数個のサーチライトは割れたが、分厚い装甲は深くは傷つかない。
「戦うのか?」
 敵を睨みながらエビンは訊いた。
「ここから出るなら、そうするしかないね」
 敵の太い六本の足が動くたびに橋が揺れた。
 エビンは柔い接続部を狙って斬り掛かる。
 しかし六本の足が巧みに軌道を逸らし、装甲が刃を弾く。
 敵の腕に組み込まれた銃がすかさず反撃を放ち、エビンは剣で前方を守りながら後方
に飛ぶ。
 [雷]の魔術を記憶から引き出し、着地と同時に詠唱を始める。
 応えるように手元が緑色の光を帯び、足元で同色の力の流れが波紋する。
 ラナンが敵の気を引いているうちに剣を背に戻してサンダーを放った。
 一本の雷が頭上から敵を貫く。
 一瞬動きが止まり、次の瞬間にはわずかに鈍さを負って動き出す。
 ラナンの銃弾が膝の連結部に穴を開け、体が傾き、残りの五本が攻撃からカバーへと
移る。
 エビンは剣を取り、勢いをつけて負傷していない前方の膝を分断した。
 敵は前のめりになるが、後方の足で踏ん張ってどうにか体勢を戻し、厳つい尻尾を上
げた。
「気をつけろ。レーザーで反撃してくるぞ」
 エビンは叫んだ。
 しかし遅かった。
 ラナンの銃弾が装甲の表面を走り、敵の尾に怪しげな光が宿る。
 構える間もなく幾筋の光が尾から放たれ、二人の体を切裂き、弾き飛ばされる。
 エビンは鉄の壁に背から叩き付けられて、思わず咳き込む。
 それと同時に体内で熱いものがふつふつと湧き上がるのを感じた。
「こいつ!」
 構えたラナンの銃口にぎらぎらと燃えたぎるエネルギーが球状に集まっていた。
 華奢な二本の足が懸命に体を支えるが、強力なエネルギーのせいで上半身が不安定に
揺れる。
 ラナンは歯を食いしばり、狙いを定め、エネルギー球を発射した。
 球は湿った空気を引裂き、敵の腹部の装甲を焼き、抉った。
 敵は前方から倒れ込む。
 機能はまだ停止しておらず、もがくように足たちを動かして再び体勢を整えようとし
ている。
 太い足が橋の表面を削り、低い音が辺りにこだまする。
 エビンは体内にみなぎる熱い力が腕から剣へと注がれるのを感じ、赤みを帯びる刃を
見つめた。ゆっくりと呼吸を繰り返し、意識を集中させていく。
 敵が立上がり、再び攻撃に入ろうとしていた。
 エビンは走った。
 敵の目の前で大きく跳躍し、剣を振りかざす。
 力の宿った剣は閃光を発し、敵を頭部から深く斬り込む。無数のコードが切断され、
ネジが弾けた。剣はそのずしりとした重みと、エビンの体と共に敵を縦断し、地に足を
着けた。
 引き裂かれた分厚い装甲の中でぐちゃぐちゃになった機械の内臓が漏電し、自らの回
路を破壊した。膝が折られ、巨体がどしんと重く大きな音を立てて倒れた。橋が大きく
揺れた。エビンは敵が完全に沈黙したことを確認して剣を背に戻した。
 
 
©CrowdGate Co.,Ltd All Rights Reserved.
 
| 総合TOP | サイトマップ | プライバシーポリシー | 規約