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クリエイター名 |
みやめがね |
街の一角で(サンプル−戦闘)
『街の一角で』
ほんの少し歩けば、眩いネオンが彩る夜の街へと辿り付く狭い路地裏。 そこに1人の男と1匹の化け物が対峙していた。 男の身長は2メートル近く、肩幅も広い。服装はTシャツにジーンズというラフな格好。シャツが小さめの所為か、鍛え抜かれた筋肉がありありと見て取れる。 それに対して化け物はぱっと見は巨大なライオンのようにも見えるがコウモリのような翼が生えていたり、額に1つ余分に目があったりと判り易い化け物感を放っている。 何か合図になるものがあった訳ではないのに、男が化け物に駆け出すのと、化け物が男に飛び掛るのとはほぼ同時だった。 化け物は全身で圧し掛かるように前足を繰り出すのに対し、男は姿勢を低く保ったまま突っ込んでいく。 化け物の前足が男を押し潰す寸前、男は思い切り体を起こし、その勢いで跳躍した。 男の動きに付いて行けず、前足は空を切ってコンクリートの地面を粉砕してめり込む。 男はそれを足場にして更に飛び上がり、化け物の顔面に膝蹴りを打ち込み、更にその反動を利用して化け物の後頭部に回し蹴りを叩き込む。 ほんの数秒の後、まるで地の底から響くような低い唸り声を上げて化け物は地面に突っ伏した。 「全く……」 男は短く嘆息し、たった二発の攻撃で気絶した化け物の頭を持ち上げた。 「なんでこうなると分かってて逃げ出したんだ、ポチ」 男は酷く悲しい表情をして、ポチと呼んだ化け物の頭を撫でた。 「おやつをビーフジャーキーから鳥のササミに変えたのがいけなかったのかぃ?」 次いで今度は泣きながら愛おしそうにポチの顔を抱きしめる。 「これも最近ちょっと太りすぎなお前の為なんだよ、我慢しておくれよポチぃぃ」 ポチの感触を堪能して満足したのか、男はおもむろにポチを肩に担ぎ、街へと歩き始めた。 「さぁ、ちょっと汚れてしまったし、お風呂に入ってブラッシングしてあげよう。今夜だけはビーフジャーキーも用意してあげるからね」 意識を取り戻していたのか、地の底から響くような唸り声でポチは男に甘えた。
生物の品質改良があらぬ方向に進み過ぎたこの街の名はクリテニア。 通称『化け物街』のよくある風景である。
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