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クリエイター名 |
H.yuma |
サンプル
『魔術ゲーム』
「くそっ。くそっ。くそォ!……」 僕は、…僕自身に――真壁マコトという人間にどうしようもない怒りの言葉を呪文のようにぶつけている。 ――焼けつくような焦燥感。 からだが二つに引き裂かれるような、猛烈な後悔の数々――。傷つき、子供のように怯えながら、児童公園のすべり台のかげに身を潜ませながら。 子供のころ、親にしかられて隠れたことがあるすべり台も今と同じタコ型だった。 (このゲームはいったいなんなんだ。このコスチュームを装着していれば、空も飛べるしコンクリートの壁も拳で穴を空けることができる。本物の魔法じゃないか。こんなものがこんなものが現実にあるなんて……!) 僕が今変身しているのは、風のジョイと呼ばれているカードゲームのキャラクターだった。 あの日、どこにでもある普通のゲームソフト販売店だと思って入った時から、僕やこのゲームに参加しているすべてのプレイヤーは悪意ある魔法にかかってしまったのだ。 そうとしか思えない。でなければこんな非現実的なことってあるか。まるで魔法かアニメじゃないか。 「魔法のカードを使った魔術ゲームです。このゲームに参加されますと、あなたが選ばれたこのカードのキャラクターに変身することができます。 そしてこのキャラクターが持っている特殊な能力を、あなたも実際に使うことができるのです。ゲームはあなたと同じようなプレイヤーたちと戦って倒すこと。とどめをさして殺しても、相手を戦闘不能にして無力化するだけでもかまいません」 あの女性店員はそういった。特徴がなさ過ぎて、まるでアニメのような非人間的な店員の説明だった。 実際に変身できた時、僕は舞い上がった。うそじゃなかったんだと、ただただ小躍りしながら五十階建ての高層ビルを風を操る能力を発動させながら飛び越えた。だがそれがすべての間違いだった。まるでテレビゲームの世界へ一気に転移したような感覚に、良心や常識といった当たり前にある感覚がマヒしてしまったのだ。 風を操り、かまいたちのナイフで相手を切り裂き風の剣で敵となったプレイヤーの首を切り落とした。 こうして他のプレイヤーに追いつめられて初めてわかった。あのコスチュームの下は僕と同じこのゲームに取り込まれた普通の人間だったということを。 だからわかる。降伏しても助けてくれないことを。僕もそうだったのだから。僕をねらう破壊音が近付いてくる。 公園の入口の向こうに、複数の奇妙なコスチュームの人影が現れた。僕のゲームはもうすぐ終わろうとしていた…………。
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