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クリエイター名 |
朝瀬 刹那 |
サンプル
◇ サンプル2:女性一人称、ギャグ寄り冒頭シーン
――性別? 愛の猟人であるあたしに、そんな無粋なものは関係ないの。 愛している、それだけじゃダメかしら〜? しとめてみせるの、あたしのたった独りのひと!
「あたしは愛に生きるの〜。だからね、全力で追いかけるの」 (それはある意味でストーカー行為じゃないのか?)
あのひとを初めて見た時、ピピッ! ってアンテナが立ったの。 なんて美しいひとなのかしら〜、って。 思考回路に衝撃が走ったわ。間違いなく、あたしの人生はあそこで一回転……いいえ、三回転くらいはしたはずなの!
そのひとを初めて見たのは、高校の入学式の時。 たまたま近くにいたから目についたのかもしれないけど、きっとそれだけじゃないわ! あきらかに周りとは異色を放っていて、纏っている雰囲気からしても独特だったもの〜。 前髪は柳の葉のように細く整った眉より少し上の辺りで真っ直ぐに切り揃えられてあって、桜色に色づく頬を縁取るようにして、腰の辺りまで伸びた、濡れたように艶やかな直毛の黒髪が宙を舞っている。ぱっちりとした二重瞼に、切れ上がった黒目がちの瞳を縁取る長い睫毛は静かに瞬きをして伏せられると、白磁の肌の上に影ができる。 その瞳の奥には、全てを見透かすように透き通ってもいる青い焔が静かに燃え滾っていた。 透けるような白磁の肌の白さとは正反対な、紅を引いていないのにも関わらず、紅く色づいて薄く整った唇は傍目から見ても妖艶で。 その体型も出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいて――所謂、ナイスバディって奴に分類されると思われるくらいスタイルがよくって、しかも手足もスラッとして長く、背も女の子にしては長身! テレビに出ていてもちっともおかしくない容貌をした、キレイなひと。 むしろ、こんなキレイなひとを見たら、これから先、どんなにキレイなひとに出会ったとしても霞んで見えてしまうわ〜。 同い年には到底見えない、毒々しくも艶やかに咲き誇る薔薇のような色香を纏っているそのひとは、周りから静かなる注目を浴びていた。 今年の三月末までは中学生だったなんて信じられないくらいの大人びた美しさといったらなかったわ! 一瞬以上にも見惚れてしまったけど、その光景はとっても壮観だったし、思わず羨望の眼差しで見つめちゃったわ〜。だって、あたしは人から童顔だのロリ顔だの言われるようなチビなのよ? これが羨ましい以外のなにになるのかしら。
――とにもかくにも、そんな感じで、あのひととの出会いは衝撃的だったの。 そして、次に再会したのが教室の中で。なんと同じクラスだったの! これこそが運命! というような劇的な出会い! ああ、あたしとあのひとの小指にある赤い糸は繋がっていたのね! あのひとはきっと、十五年間(十六年間かしら?)あたしを待っていてくれたんだわ。 そう思ったら感激しちゃって、出会いの順序も踏まずにぺろっと言っちゃったの。 「あたしたちは出会うべくして出会ったの〜。とーゆーことだから、結婚しましょ」 「……は?」 時が止まったような気がしたけど、愛の猟人であるあたしには無問題よ! さあ、一緒にいきましょう! 愛に満ち溢れたパラダイスへっ。 きっとあなただって、あたしと一緒になったらもっと幸せになれるわ。
だって、あたしほど、あなたを愛しているひとがいて?
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