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クリエイター名 |
くらら |
恋愛風小話
「ねえ。かごめかごめ、やったことある?」
唐突過ぎる質問に、彼の形の良い眉がちょっとだけ動いた。
「皆で誰か一人を囲んでくるくる回って、中心の子が目隠ししながら自分の後ろの子を当てるの」
珍しく歩いて帰る彼の隣を歩きながら、あたしは答えも待たずに言葉を続ける。
「あれってね、『あたしを階段から突き落としたのは誰だ』って意味なんだって」 「……、で?」 「小さい頃はそんな事知らなくてよく遊んだけど、今考えるとちょと怖いね」
夕日が沈む、茜色の帰り道。 思い出すのは子供の頃の、他愛もない遊び。 いつもあたしは、後ろの正面を言い当てられなくて。
「悔しかったのよ。子供心に」 「負けず嫌いはガキの頃からだな」 興味もなさげに言いながら、伸びる影を踏むようにして歩く彼。 少しだけ遅れて、あたしはその後を着いて行く。
例えばの話。 貴方を囲んでかごめかごめと唄った時に、あたしが貴方の後ろに立ったら、貴方はあたしの名前を呼んでくれる?
「あたしね、今なら絶対負けないよ」 「二人だけでやっても意味ねぇだろうが」 「じゃあ今度、休み時間にみんなでやろうか」 「……なんでこの俺がガキの遊びを…」 「アンタが後ろの正面なら、あたしは絶対当てられるわ」 「――――――……」
たとえ貴方があたしを言い当てられなくたって。
たとえ貴方が、あたしを誰かと間違えたって。
目隠しされても、耳を塞がれても。
あたしは絶対、後ろに立った貴方の名前を呼んでみせるんだ。
終わり。
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