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クリエイター名 |
平山 ハル |
サンプル
※心理描写。(男性)
「くそったれ!」
真実、自分への罵倒だった。必死に起き上がろうと、フィンは石畳の上で足掻く。 手に入れたのだ。小さいが、確かな機会を。それを放って、またヒモに逆戻りか? 自問する。 冗談じゃない。 血が滞ってしまったのか、足が動かない。掌で大きく神経を取り戻そうと叩く。この全身を、あの、騎士を目指していた頃に戻すのだ。 いっときでもいい。 だから――。
「動けってんだよ! このクソ手足!」
自分の体を詰る。 今、ここで動かなければ、もう何も残らない。一切合切また奪われるのだ。 自分の人生を糞まみれにする気か? その瞬間だった。ひきつれていた両足がゆっくりと感覚を取り戻す。ようやく血管を通じて、筋肉がもとのしなやかさを取り戻す。 立ち上がってゆっくりと深呼吸した。それだけで再び体が生き返った。 そしてフィンは、すでに黒い点となって走り去る彼女の背中を追った。 全ては己のために。
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