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クリエイター名 |
宇野 有紀 |
負けないから! オリジナルノベル
負けないから
私と寿君が出会ったのは、地面が銀一色の夜だった。 長い長い夜が始まり、必死に寒さと戦っていると。 「どうした、行くとこ無いのか」 寿君が微笑んで私に傘を差し出していた。 「こんなになっちゃって」 私の頭に積もった雪を払って、彼はアパートに上げてくれた。 その時半分こして食べた鍋焼きうどんの味、今も忘れない。私、猫舌だからわざわざお皿に移し変えて食べさせてくれたね。 本当に暖かかった、おいしかった。 何よりも、嬉しかった。 私と寿君の生活はこの日から始まる。少しでも寿君の役に立ちたくて家事の手伝いをするけど、いつも失敗ばかり。 「ボクがするから、ミユキは休んでて」 そんな彼の優しさに落ち込む事もあった。 でも、それは昔の話。 寿君が帰ってきて、真っ先に彼の冷えた両手を温めてあげる勤めを見つけた今、私は役目を懸命にこなす。 寿君との幸せな思い出に浸ってこたつの中で丸まっていると、玄関から鍵を差し込む音が聞こえた。 「寿君だ!」 こたつから飛び出て玄関へ疾走。 ドアから光が差し込む瞬間。 「おっかえりー!」 私は全力で寿君の胸に飛び込んだ。 「ただいま。今日はお客さん連れてきたよ」 寿君の腕の中から顔をあげると、女が私を見て目を輝かせる。 「可愛い! 名前は何て言うの?」 女から視線を外して、寿君に失望の眼差しを宛てる。 私の事妹とでも行ってつれてきたの? あんなに優しく・大胆に私に迫って、こうして一緒に暮らしているのに。 「遊びだったの? 私の事」 寿君は私の声が、さも聞こえない風に振舞っている。 すると、寿君は玄関に上がって女に振り向いて……。 女に私を差し出した。 「ウチの猫。ミユキって言うの」 「可愛い!」 同時に女が私の頭に手を伸ばす。 「触るな!」 牙を向けてがなってやった。 「ごめん、今日不機嫌みたい」 寿君が謝るも、女は残念そうにしてる。 せいぜい、そうして猫被っておきなさい、いつかひんむいてやるから。 私が寿君を守ってみせる! 「私、絶対負けないから!」
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