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クリエイター名  柚木薫
月の夜と

 オリジナルノベル冒頭抜粋

部室の外はずいぶんと騒がしい。理由が学園祭であるからであって、この部室に誰も来ないのはなんいも催しものというものをやっていないからであって、さらにこの部屋には人が二人しかいないという理由からだろうと俺は推測する。
 現在の場所、東経、西経なんぞであらわせといわれても無理なので簡潔に言うと、文芸部室。東野高校東校舎二階の一番端にあてがわれたまぁ、綺麗だが、そんなどんづまりまで行く気はせんというなんとも客寄せが悪い場所で、意外にも広い部室の中ではかちゃかちゃとブラインドタッチレベル並、くらいでPCにむかっている少女がいる。
 部室はたてに細長く、十畳ほどで、真ん中には長机とパイプいすが4つ。原稿うちのためにかどこからガメてきたワープロ及びパソコンが5台。入って正面に窓があり、左右にはよくわからん雑誌などなどがつめられた本棚書棚が乱立してなぜかガスコンロがあり、そしてなぜかお菓子なんかも横の棚にある。
 そのお茶やらなんやらを飲みながらひたすらブラインドタッチレベル21くらいで打ち続ける少女は机のど真ん中で、さらにこの寒いのに暑いとブレザーを脱いで腕まくりまでしている、ところから俺はX軸方向に−3、Y軸方向に−・・・・すまんわかりずらい。つまり斜め向かいに座ってその「一生懸命お仕事してます!銀行員レベルマックス」少女を俺はぼんやりとほうじ茶をのみながら眺めていた。
「あー・・・・なぁ」

 反応なし。
「あー・・・・俺帰っていいか?」
「だめ」
 即答。
「あー・・・・どうして?」
 反応なし。
 俺はふぅーっと盛大にため息をつくとゴンっと頭を窓方向に向けながら机に着地させた。なにやら風船、気球、紙ふぶきなどが飛び交い、いきまーす!とかの声とともに水に飛び込む音が聞こえたり、爆竹がいっせいに学校全体から聞こえたり、まぁ、学園祭のお祭り気分はここからでもわからないことはなない。机に頭が密着しているために無駄にダスダスとキーに力をこめて打つ振動が伝わってくる。
 俺はほうじ茶が入った湯飲み越しのその風景にいい加減飽き飽きしたのでまた頭を起こすと、その少女をみる。
「なぁ」
 俺はまた湯のみを揺らしながら頬杖をつき、言う。反応なし。ノーリアクション。対象物の反応が変化しません博士。
「えー綾さん」
 名前を呼んでみた。上記同文。
「綾さん?」
 疑問系でいってみた。いわづもがな。
「綾ちゃん、今日も綺麗だね!」

 漫画の慣用句的なことをいってみたがまったくもって微動だにせずに、
「うるさい」
 はいはいそうですか。わかりましたまったく俺はどうすりゃいいでしょうねわかるやつはいますぐここにこいなんでも奢ってやるぞ。五百円までなら。

 さて、ちょっと時間を三十三分と五十秒ほど過去に時空移動してみよう。まぁそんなドラえもん的なことができるわけでもなくただ単に回想なんだけどな。

 学園祭というからにはどこのクラスも出し物があるわけで、もちろん俺のクラスでもくそ長いホームルームの末に、さらに投票結果の末に「喫茶店」なんぞというなんともまぁ、無難なポジショニングに収まった按配だった。
 とはいってもきっさてんなんてなにをやっていいかわからん。ので俺はぼーっと思考錯誤するクラスメイトたちを見てるだけで首尾よくすべてが決まっていった。世界は自分中心に回ってるんじゃないもんだね。サンドイッチの軽食がメインであとはほとんどがお菓子やら飲み物。まぁいっちゃえば休憩所みたいなところになったわけだ。適当この上ないことだ。何もしていない俺がいうのもなんだがな。

 さて。物語はここから始まる、なんて小説の導入部チックな文句をいうまでもなく、商売するからには金に目がくらむというものが人間生物の性である。そしてこのクラスでは「あーめんどくせぇ」という男子よりも女子のほうがやる気満々であって、
 「客引きにはやっぱり衣装でしょう!」
 となんかウェイトレス(男子は裏方、女子はサービス全般というのが取り決めだった)の女子の制服を全部全員が手作りをしてなんとか完成させた。

 まぁ、なんというか・・・。みもふたもないこといえばコスプレだった。いや、違うな、制服チェンジ?女子たちの着ているウェイトレス制服はなんか別学校の制服のをまねたかのようなもので下は桃色と白のチェックのミニスカートに白のハイソックス、ローファー。上は白のブラウスだがここで違うのはなんか美少女ゲームでてきそうな可愛い(と俺は思う)デカイリボンに頭には当然のようにカチューシャ。胸には丸字のプリントで名札までついているから少々高校生がやるには危ない感じだが実行委員会がなにもいんわのだからいいんだろう。っていうかただ衣装着たかったから女子の皆さん乗り気だったわけですね?

 俺にはそんな女心はわからんが裏方の仕切り版で中学からの腐れ縁の中居と目の抱擁をしていた。比較的美女ぞろいのこのクラスでのこの光景はなかなかのものだったってなにいってんでしょうか俺は。

 クラスの中には客が座れるテーブルが8席あって、その中を天使(ウェイトレス)が右往左往していた。
「いっそのことならメイド服でいきゃよかったのに」

 俺の横で業務用サンドイッチ用の卵パックをきりながら、女子たちのプロデュースに不平を言う仲居だが、そこまでいくとさすがに営業停止だろ。

「まー・・・画竜点睛を欠くとはこのときに使うんだろうが、みなさんもそれをしって無難な制服スタイルを選んだんだろ」

 俺は横からタマゴがのっかったパンを受け取りサラダなんぞ乗せていく。

「でもまぁ、このスタイルでも、」
 いきなりバンっと音がした。

 客を含めて全員がその音の方向を見る。立ってるのは東野の制服のブレザーを着た女子生徒。髪はストレートでストンっと背中におちていてさらさらと動き、目鼻立ちがくっきりした顔。いわゆる美人の部類だ。

 その美人さんはクラスの中をこれからヤンキーに喧嘩でも売るがごとくの形相で1人のこらずガンをとばし、俺に固定された。いい表現を使うならばロックオン。ファイア、である。意味わからんな。
 全員は、というかまぁ一部はしっているだろうが、彼女は二年八組の女子であり、文芸部員であり、その部の看板娘であり、俺の間接的の知りあいであり、俺も、まぁ彼女目当てで文芸部に入り浸ってるようなかんじであり、俺にロックオンして長距離対空対ミサイルを発射しようとしているのはなぜかということまではほとんどのものがわからなかっただろう。俺はぽかんとしていて、ここでミサイルの誤誘導するフレアなりチャフなりばら撒いてさっさとダッシュでくだらない合唱部がやっている北体育館に避難するべきだとこの時点ではミジンコ並みに、一ミクロンほどにも気づいていなかった。
 というか俺自身わからんのだからキョトン、なんだがな。なぜ、なにゆえ彼女はここにいるのか?
 彼女は客やそのた大勢の目線なんぞ気にすることもなく「関係者立ち入り禁止だよ?」というプレートなんかありさんのまえにあいた塩なみに無視して、俺の前に立つと、

 「緊急事態なのよ!」

 そう言った。
 中居が固まるというか固まりっぱなしで、俺もサンドイッチを片手に固まりっぱなしで、ウェイトレスも彫刻化して彼女を見ている。
 なるほど緊急事態だからそんな緊迫した顔をしてずかずか入り込んできて俺の前で叫んだんですね、なんて要領のいいやつがいたらぜひ見てみたい。そいつは頭が北極圏に向いているのだろう。そして向いていない俺はもちろん尋ねる。

 「あー・・・・・、待て。柊。なにがなんだって?」

 が、俺のその悠長な(と彼女は判断したらしく)発言に柊さんこと、柊綾は誰の目にもわかるように眉間に谷をつくり、俺の手首をがしっと固定し、逃げられようにさらに片方の手までロックし、

 「とにかく来て!事は急を要するのよ!」

 そういうやいなや、物凄い、この女は一体握力はいくらなのだろうかという疑問が呈するくらいの力で俺はクラスから連行され、っていうか最終的には引きずられてたけどな。なぜか誰もいない文芸部室に連れ込まれ、おいおい、まさかあれか?なんて俺が考えてほうけている隙に彼女はさっさとPCの前に陣取ると、キーを押しつぶすかのよう力でたたき始めた。
 で、今に至るわけだが。まったくもって柊の目的はさっぱりである。なにきいても「だめ」「うるさい」「待って」の三つしかかえってこないので日本語の会話が成立しない以上、意思疎通が困難なためにさっぱりわからん。
 俺はほうじ茶の代わりをつぐために席を立ち、きゅうすにお湯をおれてゆのみに入れて、ふと柊を見て、
 「・・・・お前も飲むか?」
 するとどうせ無反応だろうとおもったのだが、意外にもこちらを見て、相変わらずの不機嫌そうな顔を崩し、っていうか疲れてんな、まぁこの速度でタイプし続けたらあたりまえだけど、弱弱しくにっこり笑うと、
 「ありがと、もらうわ」
 「・・・・・・・・・・・」
 ちなみに俺に顔向けている間でも柊の指はとまらない、っていうか速度増してね!?タイピングレベル五十四だ。みないで小説(と思う)を書くなんてブラインドタッチをはるかに凌駕して神業である。
 俺はあきれて肩をすくめると柊の分のほうじ茶を入れ始めた。もちろんお茶の葉をいれかえてな
 
 
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