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クリエイター名 |
黄昏みとん |
Sample2
Sample(ファンタジー系)
「はっ!」 素早く攻撃射程内に入り、身の丈もあるような大剣を振り下ろす。だがその動きは完全に見切られ、すんでのところで空を切り裂き、勢いそのままに地面へ。衝突した瞬間、大地を揺るがす轟音を立て、地面に大きなクレーターを作った。 予想以上の破壊力に驚く間もなく、軽く剣撃を避けただけの敵は地面から吹き上がった土や石の衝撃を全身で食らう。そして数十メートル後ろへと吹き飛ばされ、まるで体全体がゴムで出来ているかのように地面を大きく何度もバウンドして転がっていく。 一撃で勝負ありだった。敵は完全に沈黙したようで、地面に倒れ伏せたままぴくりとも動かない。勝利の笑みを浮かべながら、リンは敵の下(もと)へと歩み寄る。敵は深いローブで顔を隠していたため、無謀にも命を狙って襲い掛かってきた相手の顔を見てやろうと思ったのだ。 「ふふん。あたしとこの神剣『ゼクシア』を甘く見ないことね」 うつ伏せに倒れていた敵を足蹴にし、仰向けにさせる。そしてローブの中を覗き込むと―― 「えっ――?!」 リンの体に戦慄が走った。目の前で倒れているのは、人間によく似た人形だったのだ。 瞬間、背後に凄まじい殺気。体温が一瞬にして低下し、ヤバイと本能的に感じたリンは即座に横飛びをした。 「断(だん)」 一瞬でも反応が遅れていたら致命傷を受けていただろう。僅かながらその攻撃を掠っただけで、リンの左腕の肉が抉られ血が溢れるように外へと湧き出ている。 「う……そ……」 戦いの支障を少しでも短くするため、即座に負傷した部位の治癒を施すリンが見た光景は、敵の持つ巨大な斧の攻撃により地面が大きく割れたものだった。 ありえない腕力――というよりは、その斧から発する禍々(まがまが)しくどす黒い気配は人間の作り出せるような代物ではない。リンは理解する。あの斧は『神剣』と相対する、破壊と滅亡をもたらす『魔剣』なのだと。 「まさかこんな唐突に魔剣と出会うなんて思わなかった。最初から分かってればこんな傷を負うことなかったのに」 自分の軽率さをリンは呪う。一流の剣士や魔道士が相手であっても、神剣の力があれば今負っている左腕の深い傷さえ些細な問題で済ますことが出来た。それだけ神剣の能力は絶大なのだが、今目の前に立ち塞がるのは神剣と同等の力を持つ魔剣所持者。力関係はほぼ互角となる。だからこそ、リンが深く負った傷はかなりのマイナスファクターになっていた。 「構えろ」 地面に突き刺さった巨大な斧――魔剣を引き抜き、顔に大きな傷のある筋肉隆々の男は言う。左腕がまだ完治せず、右手だけでリンは神剣を男に向けて構える。 「神剣は破壊させてもらう。俺の魔剣の贄(にえ)となるがいい」 男の姿が消えた。高速移動でリンの背後に回ろうとするが、同様の力を所持するリンにはその動きがしっかりと目に映って見える。死角を取らせるわけにはいかず、方向転換をして斬りつけた。それは魔剣により止められ、大きく弾かれた。 「――っ!」 片手で柄を握っていたため、瞬間的に襲った衝撃に危うく神剣を手放すところだった。体から離れてしまえば普通の魔法剣士に戻ってしまい、その瞬間から男の動きは一切見えなくなり、まな板の鯛状態になったリンは無残に殺されてしまうだろう。 完治しきらず、なおも痛み続ける左腕に鞭打ってリンは両手で神剣を掴む。 「こんなところで死ぬなんてまっぴらごめん。それに――」 眼前には猪突猛進の如く迫り来る男と魔剣の姿。 「魔剣はこの世界に不幸しかもたらさない危険因子。絶対に破壊する!」 リンは気迫十分、正面からぶつかっていくのだった。
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