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クリエイター名  桜井小春
サンプル

:: Your song2 ::




青の空に

ゆるうりゆるうり円を描いて飛ぶ

瑠璃色に艶めく羽に身を覆われた

愛すべきあなた。



森の木々たちは

毎日

毎日空を見上げ

あなたも

毎日

毎日森に降り立っては

枝々をひょこひょこと移り 移り

木々とお喋りを楽しんだ。



雨の日もあったけれど

寒い夜もあったけれど

あなたは決して

飛ぶことをやめようとしなかった。



そして

歌うことも。



私は

次にあなたが私の枝に降り立ったら

あなたの歌を聞いて嫉妬していた

ひばりの話をしようと思っていた。

ところが

ある日から

あなたの姿が見えなくなった。



森の木々たちは

ザワザワ

ザワザワ

枝を揺らし

みんなで

どうしたんだろう

どうしたんだろう



囁き合うことしか出来ない。

それでもみんな

あなたを探した。



風がこんな噂を運んできた。

「人間だ。人間があの鳥を撃ったんだよ」

私たちは絶句した。

人間への憎悪よりも先に

あなたのことが心配で

心配で

心配で

もうあの瑠璃色の姿は見られないのか

とか

もうあの歌声は聞こえないのか

とか

そんなことよりも

あなたの存在そのものが

もう無いかもしれないなんて

恐くて

悲しくて

悲しくて

それでも

ザワザワ

ザワザワ

枝を揺らすことしかできなくて。



私たちは永い永い夜を過ごした。



ある朝。

朝露に濡れた葉が煌く

柔らかな日差しが東から昇った時。



声。



私たちは耳を済ませた。

間違いない。

あの子だ。

あの子だ!

あの子の声だ!



私たちは喜びにうち震え

光溢れる森に

朝露の雫が降り注いだ。



あなたは傷ついた翼で

私たちのところへ飛んできてくれて

「ただいま」

と歌ってくれて

私たち一人一人に

キスをくれた。



そしてあなたは再び

強く

健気に

一途に

あの青の空を

太陽を

目指して飛び立った。



ゆるうりゆるうり

螺旋状に

高く

高く

昇っていくあなた。



さあ

もっともっと太陽に近づいて。

あなたの翼はイカロスの翼などではないから

あの光り輝く希望の塊に

どんなにどんなに近づいたとしても

決して

堕ちてしまうことなどないでしょう。



ああ

歌が聞こえる。

誰の歌でもない。



あなたの歌。




 
 
 
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