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クリエイター名 |
紅白達磨 |
コメディサンプル
……神。人間たちはおれのことをそう呼ぶ。 そう言われれば聞こえはいいが、実際は何も変わりはしない。 人間たちがそうであるように、俺も飯を食い、生き、年老いていつかは死ぬ。そこには浄も不浄もありはしない。早いか遅いか、ただそれだけだ。 確かに俺たちは人間よりも死ぬまでの時間が多くある。だがそれになんの意味がある。ただ毎日をなんとなく生きるだけの人生に……。 しかし、いやだからこそ、俺には譲れないものがある。 夢、金、恋人、家族……それは人それぞれだ。 それについてとやかく言うつもりはない。その権利も俺にはない。 人は俺のことを馬鹿にするかもしれない。 だが、地べたを這いずり回っているお前らには俺の気持ちはわかるまい。 そう言った俺の身体からは、紅に染まった一滴の血が流れ出ている。 そう、今、この時……。 この瞬間こそ……おれの全てだ。 「なぁにかっこつけてんだ、てめーはぁぁぁ!!!」 「ごはっ!!」 思いを馳せる青年。その背中に宰相の一六文キックが炸裂した。 「天界での会議さぼって何してるかと思えば!!!なぁにが『紅に染まった一滴の血』だ、要するに鼻血だろうがぁ!ただの鼻血!!いい年こいて、女子高生の覗きしてんじゃねぇぇ―――!!!!」 蹴り飛ばされうつ伏せに倒れている青年に宰相は叫んだ。 ここは下界。天気は快晴。女子学生たちが通うとある学校の屋上である。 下を見れば、グラウンドで体操服に身を包んだ女子学生たちがスポーツに汗を流している。 しばらくして蹴られた背中を手で押さえながら、青年がのっそりと立ち上がった。 「ったく、うるせなぁ。おまえは最初からとばしすぎなんだよ。読者様がびっくりしちまうだろうが」 「神様のくせに女子高生の覗きしてるお前の方がびっくりするわぁ!!」 「落ち着けって。ちなみに言っとくが覗きじゃねぇ、下心を持って見るのが覗き、俺のは違う、純然たる観察だ」 「そういうセリフはまず鼻血を拭いてから言え!説得力ねぇから!!」 「うっせえなぁ、なんならどうだ、ほらお前も」 「あ、こりゃどうも……ってちがぁぁ―――――――う!!!」 そういって宰相はおもいっきり双眼鏡を地面に叩きつけた。 「あ、てめ、せっかく通販で買ったっていうのに、高かったんだぞ、これ」 「通販!?神様なのに通販!!??」 そこで取り乱していたことに気付いたのか、宰相は一つ咳をして気を取り直す。 「おほんッ!いいから早く天界に帰りますぞ。あなたは天界の王子なのですからもっと自覚を持って……って、聞けぇぇぇぇ!!!」 目を向ければ壊れた双眼鏡を片手に青年はグラウンドに目を向けていた。 「さっきからごちゃごちゃうるせえなぁ!どこの姑だ、お前は」 「頼むから大人しくしてくれ!!お前がなにかやらかす度に世話係の俺につけがまわってきてんだよ!もう50%減給なんだよ!家のローンもまだ30年残ってんだ!今年娘も生まれる予定なんだよ!頼むから言うことを聞いてくれ!!」 宰相の必死の説得も虚しく青年は我関せずと言った感じで観察(覗き)を続行している。 もはやこれまで、と説得を諦めた宰相は青年の腕を掴むと強引に引っ張った。 「はやく行きますぞ!人間にでも見つかったら私だけではなく、殿下もただでは」「待て、最後にかおりちゃんのEカップを……」 「いい加減にしろ、このエロ王子!!!!!」 怒りに顔を真っ赤に染める宰相。それとは反対に青年は首を傾けたまま気だるそうに口を開いた。 「心配しすぎなんだよてめーは。俺たちの姿は遠くからは見えないようなってるから安心しろ。それにこの時間帯に屋上に来るやつなんて……」 ガチャッ 屋上につながる扉。その扉のノブがゆっくりと廻った。
「「「……あっ」」」
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