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クリエイター名  倉葉倉
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 森の中を歩いていると、一軒の山小屋があった。
 といっても、それは随分とくたびれた山小屋で、俗に言う廃墟、そこまで
仰々しくは無くても、廃屋という程度の建物だった。
 しかし、雨で濡れた体を乾かすには、葉っぱの屋根より丸太の屋根の方が
何倍も心強いので、そこで一休みする事に決めた。
 山小屋の中に入ると、隅にはうず高く積まれた薪以外……これといって何
も無かった。そこは恐ろしく殺風景な山小屋で、木を組んで立ててみたもの
の、使い道も無いから放棄されたような印象を受ける。
 そう思えばこそ、隅に積まれた薪が余計に寂しさを誘い、あの薪も運び込
まれたものの、一度も使われなかったんじゃないだろうか、なんて事を考え
たりしてみる。
 一体どれぐらいの期間放っておかれた薪なのか知らないが、先程の雨で乾
いた木なんて外からでは採れないし、使ってみる事にした。
 木を櫓型に組み立て、中には新聞紙と小枝を入れて、マッチで火を付ける。
 火は順調に燃え上がり、やがて例の薪にも火が移った。
 するとなんと、火の中に不思議な光景が現われたのだ。
 こんな山小屋では無い、大きな豪奢な家、見るだけでお腹が一杯になりそ
うな晩餐のテーブル、ふかふかの大きいベッド、プールのように広いお風呂……。
 最初のうちこそ驚いたが、その火を見ているとなんとも不思議で幸せな気
分になってくる。そうして帰る時には結局、持てるだけの薪を持ち帰る事にした。
 その薪は全てマッチに加工して、世の中の恵まれない子供達のせめてもの慰めに、と寄付をした。
 そのマッチがある一人の少女に渡った時、あの有名な話が生まれたのだ。
 
 
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