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クリエイター名 |
倉葉倉 |
サンプル
「暇だなぁ……」 少年はポツリと呟いてあくびをする。 空はそんなちっぽけな少年をあざわらうかのように青く冴え渡って、強 烈な太陽の光を地面に投げ付ける。 「暇だ……」 もう一度呟いて、少年は雑草の生える空き地を、ゴロゴロと転がった。 少年の動きに合わせて、どこに潜んでいたのか一匹の猫が近くから飛び出す。 にゃあ、と鳴いて、少し離れた所から少年に向き直った。 「お、猫……」 少年は既に相手から見つかっているのに、草の陰に隠れるように身を屈めた。 しかし、空き地の雑草には体の半分を隠すほどしか丈が無い。要するに、相手 からは丸見えだった。 しかし、そんな事もお構い無しに少年はソロリソロリと近付く。まるで、 自分は全く気付かれていない、とでも言いたげに慎重だった。 対して、猫もその少年をジッと見据えてはいるものの、全く微動だにしない。 少年がソロリソロリと近付いてくるのを、ただ座って見ている。 そんな猫の様子だから、自分が心を許されていると勘違いしたのかもしれない。 少年はソロソロと猫の体へ手を伸ばした。 と、その時。 途端、猫がニヤッと笑ったかと思うと、 「触らせるかよ」 と言って、先程とは打って変わった速さで駆けて行ってしまった。 残された少年は、自分の耳を疑いながら、手を伸ばした姿勢のまま――呆然としていた。
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