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クリエイター名 |
財油 雷矢 |
サンプル
「無情の桜(笑)」
夜桜。 闇に静かに沈む色の名前にもなっているその花。 ライトアップされていないせいか、元々ここには明かりがないせいなのか。 昼に訪れる者はいても、この時間に花を愛でる者はいない。 草木も眠る、と言われているこの時間ならなおさらである。
キン!
しかし、その静寂を破る者…… いや、者たちがいた。
キン! キキン!
幾度となく響く金属同士が打ち鳴らされる音。
「そこだっ!」 男の声と共に、空を裂いて何かが飛来する。 それは桜と同じ色のもう一つの影を貫いた。 が、貫かれた影はいきなりその姿を消した。 「なにぃ!!」
「甘いです!」 闇に少女の声が響いた。 黒い影がその声の方に向くと、桜の木の枝の先に一人の少女がまっすぐ立っていた。 少女はいわゆる忍者装束を着ていた。ただ色がピンクで、上は半袖、下は太股が見えるくらいの短さの何とも実用に向かないものであったが。 「与えられた命は如何にしても果たすべし! なのです。」 覆面の横から飛び出ているポニーテールがピコリと揺れる。 「お覚悟! 白木流忍法、桜吹雪!!」 少女の背後の桜が大きく揺れた。 いきなり突風が吹くと花びらを伴って、桜色のつむじ風となる。 「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」 悲鳴を残して黒い影が飛ばされて行く。
静寂が戻る。 桜の枝に腰掛けた少女が小さく息を吐いた。 「無情ね……」
…………
…………
…………
…………
…………
「やぁ、悪いね…… 退屈じゃなかった?」 「もぉ〜 『退屈じゃなかった?』じゃないですよ〜 いくら人気あるからって、女の子一人に真夜中からいさせるなんて……」
……そう、無情である。
「花見の場所取り」というのは……
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