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クリエイター名 |
グロック |
戦闘描写?@
その時―― 闇の帳(とばり)の奥で、扉が乱暴に開け放たれた気配があった。 「誰っ!?」 セフィナが叫びを上げた一方で、白刃を抜き放ったルシェルは気配の進入してきた方角へ進み出ていた。 複数の足音が上から降りてくる。 ゴッ、ゴッ、ゴッ、と鉄靴が階段を踏み鳴らす音が鼓膜を揺さぶった。 「この城の兵士だというのなら止まりなさい!」 ルシェルは剣の切っ尖を暗がりに群がる影へと向けて叫んだ。 返事は――来た。 闇を貫いた槍の穂先が唸りを上げ、ルシェルの鳩尾へと迫る。だが彼女に動揺はない。気配を感じた時点で敵の出現は予感していた。 ぐっ、と奥歯を噛み締める。 ――皇女の傍へは、一歩たりとも近づかせない。 ルシェルは後方に半身を引きながら剣を垂直に振り下ろし、繰り出された槍の穂先を断ち落とした。直後、全身を黒炭のような色をした甲冑に包まれた兵士が灯火の中に飛び出してくる。 兵士は切っ尖を失ったことも構わずに槍の柄を水平に払ってきた。だが、その時点でルシェルは相手の懐に潜り込んでいる。 ズッ……! 鎧の継ぎ目に刃を突き入れた。 「退がりなさい!」 身を当てて槍兵を突き飛ばしたルシェルは返す刀で右手から踊りかかってきた二番手の敵兵をも斬り伏せていた。 先ほど回廊で遭遇したのと同じ、死人のような目と肌の色をした兵士たちがルシェルに息を継ぐ間も与えず肉薄してくる。 「――うっ!?」 三人目の攻撃を剣で受けたとき、ルシェルは内心に呻いた。 ――斧だ。 細身の剣で受けきれるはずもなかった。 刀身が真っ二つになった時、ルシェルは左に転がり頭が二つになることだけは避けた。 起きざまに折れた剣を斧兵の首筋目がけて投げ撃ち、突き刺す――が、その影から新たな敵。毒蛇のようにうねる槍先が中腰のルシェルを襲う。間一髪で左へ逸らした。 「はんっ!」 柄を左脇に挟んだ拍子に肺が圧迫されて思わず変な声が漏れた。構っていられない。 力任せに槍が引かれたが、ルシェルは相手の足下を踵側から蹴り払っていた。 身体が浮き上がった槍兵の喉もとに――肘。 グバンッ、と甲冑が派手な音を立てて敵は真後ろに倒れた。 甲冑の重量も相まって倒れた衝撃は増しているはずだ。 だが―― 数瞬を置かずして槍兵は立ち上がっていた。 喉や頭部へのダメージは、皆無。 「…………」 自分の体術ごときではここまでか、と思う。 さらに―― 三つの敵影が殺到していた。
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