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クリエイター名 |
文月 猫 |
お宝探しの顛末
俺はトレジャーハンター。今までこの世界のあちこちで数々のお宝をゲットしてきた。時には死にかけたこともあったが、それでも手に入れたお宝は数知れずだ。 もちろん危険な目にあったことも数え切れず。だいたい本当のお宝なんて物は、簡単に手に入るところには眠っちゃいねえ。道中困難な度合いが高ければ高いほど、ありつけるお宝もそれだけ価値があるってわけだ。
お宝の隠し場所だって様々だ。森の真ん中にあったり、川の中だったり、時には暗い洞窟の奥や、長く危険なダンジョンの中にだって隠されてる。まあ、大体迷宮とかダンジョンにはいいお宝が眠っていたりするもんだがな。ハハハ。
おっと。お宝探しで忘れちゃいけねえのがモンスターの存在だ。だいたいこういったお宝さがしにゃ、モンスターの類はつき物だろ?かくいう俺様もずいぶんその手のバケモノとは付き合ってきたぜ。まあ、トレジャーハンターはある意味モンスターハンターでもあるからな。その手の武勇伝にはこと欠かないぜ。なあ、そこのあんた、今度じっくり聞かせてやるよ。
そんな俺様でもいつもお宝が手に入るわけじゃない。まあ、これから言う話ははっきりいって大声じゃいえない話なんだが。今日は特別に聞かせてやろうじゃないか。思い出すだけでも‥‥。まあいいや。聞いてくれ。 ありゃ、何年か前だ。とあるひなびた田舎町の安酒場で一杯やっていたときのことだ。あん時は確かその前にやったお宝探しでそこそこのお宝が手に入って、多少は懐にも余裕があったときだな。店に飛び込んだとき、たしか大分遅い時間だったような記憶があるんだが、まあ俺のほかに客がいなかったことは覚えてるな。 何杯かひっかけているうちに、そこの酒場のマスターとすっかり意気投合しちまってな。まあ、相手はそう、はっきりいって結構な爺さんなんだが、気持ちだけは若くてな。 なんでも聞くところによると若い頃は、いっぱしの賞金稼ぎだったらしい。そんなんだからこの俺様とも妙に話があっちまってな。まあ酒の勢いもあったんだろうが、話がすっかり盛り上がるうちに、何をおもったかこの爺さん、店の奥の棚から俺に1枚の古い地図を見せてな、こういうんだぜ。 「兄さん。実はこの地図はちょっと古い物なんじゃがな、たいそうなお宝の隠し場所の地図だという噂なんじゃがの。ぜひ見つけてきてもらえんかの」 というじゃねえか。
お宝、と聞けばそこはこのトレジャーハンターの俺様がのらねえわけがねえ。え?冗談だろうって?まあ、普通は最初はそういう風に思うんだが、この俺様の長年の経験から、この手の話がウソか本当かを見分ける眼みたいなものが多少はできてるんでな。で俺様の見立てでは、どうやらこの話本当みたいだったんでな。それが証拠に、この爺さん、 「もし見つかったら分け前を半分よこせ」 とか言い出しやがんの。
なんでも聞けばそこにいたる道中、かなり凶悪なアンデットやら大蠍のバケモノがでるらしく、この爺さんの年ではひとりでお宝探しするのは厳しいとかいうんでな。 俺様は考えたね。分け前半分と言うのはいささか気にいらねえが、なんてたって目の前にお宝の地図がある。しかもそれはこの町のからそれほど遠くねえ、と言うじゃねえか。だから本当なら是非お宝を拝ませてもらいたい。トレジャーハンターを生業にしてりゃ、誰だってそう思うだろうぜ。
そこで、俺様は一計案じたのさ。なあに、爺さんには適当に話を合わせておいて、お宝が見つかったら、なにもなかったといってお宝ごとずらかろうって魂胆さ。まあ相手は老人。何かあっても手出しはできねえだろうと思ったわけさ。おっと。俺様は言っておくが決して善人じゃねえぞ。この稼業、悪人でなきゃやってられねえのさ。
というわけでうまく言いくるめて地図を手に入れた俺様。翌日朝も開け切らぬうちからお宝探しにでかけたというわけさ。 地図で見る限り、そこは町から森の中を2時間も歩けばたどりつけそうな場所みたいだったがな。俺様は途中ででるというモンスターに備えて十分な装備をしていったわけよ。 道中延々と森が続いていてよ。そりゃ鬱蒼とした森で、確かに爺さんの言うとおり、何か出てきてもおかしくはねえ様な雰囲気だったけどな。 と思っているといきなり目の前に何か得体のしれねえ物が寝そべっているじゃねえか。俺様は思ったね。 「はは〜〜ん。これが爺さんの言っていたバケモノ、ってやつだな」 案の定、そいつは巨大な蠍のバケモノ。俺様に気がついたそいつは尻尾を振り上げて俺様に向ってこようとするじゃねえか。だが俺様も、こういったモンスターには年中出くわしているんでな。お宝探しにはコレぐらいのモンがでてこねと本当ぽっくねえしな。 この大蠍。俺様の方に突進してきたんで、そこで俺様はヒョイ、と身をかわしたね。なあに。敏捷さにかけちゃあ俺様の方がはるかに上だしな。で後ろから大蠍のバケモンのその毒の尻尾を持参した大剣で切り落としてやったよ。 自慢じゃねえがこの大剣。いつぞやのお宝探しでお宝のなかから出てきたもんでな。町の骨董屋にきいたらなんでもかつて勇者が魔物とたたかったときにその力を封じ込めた一品らしいというわけさ。まあ、本当かウソかはわかんねえが、それ以来コイツは俺様の守り神って、わけだ。 で、そいつで尻尾を切り落とされたその大蠍のバケモノ。苦しいのかジタバタとそこら辺をはいずりまわっていたんだが、そのうちパタリと動かなくなっちまってな。まあ早い話逝っちまったというわけさ。
そんな大蠍のバケモンを退治した後にまたしばらくいくと今度は森が開けてきてな。そこに突如墓地が現れたってわけよ。まあ、ここまでくりゃ。頭の回転の速いアンタはわかると思うが、墓、とくれば当然アイツがお出ましになってもおかしくないってわけさ。そう。例の爺さんの言っていたアンデッド、てやつがお出ましになったのさ。
このアンデッド。物理攻撃が聞かなかったり、訳のわからねえ金切り声だのその手で触られるとフリーズするとかいろいろ言われてるみてえだが、俺様に言わせりゃ、他のモンスターよりよほど楽なのがこのアンデッドってヤツさ。え?何故かって?そりゃ俺様はこういったアンデッドを浄化する呪文が込められた特殊な香り袋を常に持ち歩いているからさ?え?そんなものあるのかって?な〜に。この世界は広いんだぜ。俺様が今まで見つけた数々のお宝の中にはそんなものも入っていたりするんだぜ。
で早速こいつを取り出すと、アンデッドに投げつけてやったのさ。するってえとこのアンデッド、あっというまに影も形もなくなっちまったてわけさ。浄化されちまったんだな。ハハハ。何かこっちが拍子抜けするほどあっけなかったがよう。
まあそんなわけで地図で示された場所にやってきたんだが、そこは森を抜けたタダの草地。地図には確かに洞窟があると記されているんだが、そんなものは影も形もありゃしない。そんななずは、と俺様は思ったね。たしかに地図には洞窟らしき絵とそこにつけられた赤いバツの印。 俺様はもう一度地図を確認したぜ。方位が間違ってないか。途中で道を間違えていないかってね。だが確かに来るべく正しい道をたどってきたことは間違いないし、方角だってちゃんとあってる。地図の上下左右も正確だ。 なのに、実際にたどり着いた場所は、地図とはかけ離れたぜんぜん別の風景。これってどう考えてもおかしい。 その時俺はあることが頭の中をよぎったぜ。あの爺さん‥‥。やってくれたじゃないか。この俺様はたぶらかすとはたいした度胸だ。だがこの俺様をコケにした代償は十分に償って、いや償わさせてやろう、と思ったね。
急ぎ町に戻った俺は、例の安酒場へと向かう。たぶん血相は変わっていたと思うんだが。時刻はもう夕方近くになっていたと思うぜ。 だが店の前に来てみて俺は驚いた。昨日は真夜中でよくわからなかったが、店の入り口の扉は固く打ち付けられもう何年も人の出入りどころか店としても商売していなかったような雰囲気。ところどころくもの巣がはってるのすら見つけたほどだぜ。 俺はあせっていたんだな。目の前で起こっていることが見えてなかったんだな。やたらと扉をガンガンと叩きまくり大声で怒鳴っていたぜ。 「やい。爺さん。出てきやがれ。よくも俺様をたぶらかしてくれたな」 だが扉はビクともしねえし、もちらん中から誰か人の出てくる気配すら感じられねえ。
するとそのあまりの大声に驚いたのか、どこかから誰か男が出てきたんだ。その男、俺の行動をみるやいなや いきなり近寄ってきて、俺にこうささやいた。 「あなた、ひょっとして昨日遅くこの店で老人に出会って、宝の隠し場所とかいう地図を渡されたんですか?」 とくるじゃねえか!。なんでこいつがそんなことを知っている?と思うには思ったんだが、俺様思わずこういってやった。 「おう。確かにそうだが。その爺さんふてえヤツでな。この俺をたぶらかしやがった‥‥」 そこまでいうとその男。眉をかすかにひそめると俺にこういったんだ。耳元でこっそりと。 「そうですか。また出ましたか、昨晩も。最近よく出るんですよ」
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