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クリエイター名  ドク
サンプル2

――大吾が目を覚ますと、そこは純白の世界だった。

「‥‥ここは?」

 そこには、彼以外に色を持つ存在は無い。
 何処までも白い――虚無の空間。

「確か‥‥僕はヤツの攻撃をまともに受けて――」

 次第にはっきりとしてくる記憶――そう、自分はあの巨大兵器の拳をまともに受けて死んだのだ。
 最強の盾と言われた筈の自分が、圧倒的な力を前に、あまりに呆気無く踏み潰された。

「あはは、人間死ぬ時はやっぱりあっさり死ぬもんだな――」

 思わず苦笑し、ぺたり、と座り込む。
 その表情は笑っているが、何処か空虚だった。

「‥‥僕も、『まだ』人間だったんだな」

――一度死に、ナノマシンによって復活を遂げた大吾。
 未知の技術で再構築された己の体は、心臓を貫かれようが、頭を潰されようが再生する不死身の肉体となった。
 けれど‥‥それは最早人間では無いのではないか?
 そんな考えが、ずっと大吾の心に巣食っていた。


――けれど、これでようやく確信できた。


 自分は‥‥死ぬ事の出来る人間だと。


(「ああ‥‥良かった」)

 安心して目を瞑り、そのまま眠りにつこうとする。

――ガスッ!!

「あだっ!?」
「何勝手に死んでるのよ、この馬鹿大吾」

――が、次の瞬間思い切り頭を蹴られ、悶絶する。
 大吾が目を開けると、そこにはこちらを見下ろす死んだ筈の少女がいた。

「‥‥アイリス」
「全くもう。普段は死んでも頑張ろうとする癖に、こういう時だけ諦めがいいんだから」

 そう言うとアイリスは大吾の後ろを指差す。

「ほれ、あれ見なさいよ」

――そこには、ボロボロのテレビが一つ。
 画面には倒れ伏す自分に必死に呼び掛ける、クラスの生徒達が映っていた。

『先生――っ!!』
『立てよ‥‥立ってくれよ!!』

「あ‥‥」

 あれほど、自分を恐れていた筈なのに‥‥。

 あれほど、自分を憎んでいた筈なのに‥‥。

 大吾が始めて愛する事の出来た子供達は‥‥彼を応援してくれている。
 それを見た大吾の目に、生気が宿った。

「‥‥ごめん、行ってくる」
「ええ、さっさと片付けてきなさいな」

――もう、何から何まで分かり合う事の出来た二人。
 だから、別れの言葉はそれだけで十分だった。




――ボロボロの体で、立ち上がる。

「大丈夫だ‥‥」
『先生っ!!』

 血まみれの顔で、生徒達に笑いかける。

「先生は‥‥ヒーローなんだから」

 ボロボロのベルトを装着し、高々と手を振り上げる。




「――変‥‥身っ!!!!!」
 
 
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