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クリエイター名  風見
小説の断片(序章)のようなものも作成可能です

   序

 私は手ひどく彼を愛した。
 人間が人間たる機微を知らぬ彼を軽んじてのことではもちろんなかった。
 私の中の優しいかたまり――それは私の根源たる色とはまったく相反する、炎の一等熱いところによく似た色をしていた。
 ひどくねじくれて、だからこそまっすぐで偽りようのないそれは、温度のないように燃えさかりながら涼しげな見た目からは想像もつかない熱心さで私の全身を満たして支配した。
 弱いといえばこれほどに弱いものはなく、脆いといえばこれ以上に脆いものなど存在しないというのに、それはひねりつぶそうとする私の指から、まるで池に浮かぶひょうたんのようにぷかりぷかりと逃れ出ては色を強め、その全霊でもって私の目を眩く突いて焦がした。
 灼かれた目を覆ってのたうちまわり、そうなってから私はようやっと気付いたのだ。
 それこそが彼を愛するに必要だったのだ、と。
 彼の足もとに額づける殉教希望の輩のもとへ彼自身の手でいざなわれずにすむ方法は、私自身の手で私自身の目を潰して、私の目から彼の光輝を消し去るしかなかったのだ。
 それは泥のような闇に首までとらわれた私にできる最大限の努力であると同時に、彼自身ですら気付いていない彼の希いを満たす唯一の方法であった――がそうせよと命じたからであった。

            ――荒縄と銀貨に嘉せられた男、その類例による告白より 抜粋
 
 
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