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クリエイター名  黒焔
赤い糸



「……南東、○○高校の制服を着てるわ。スポーツでもやっているのか体型はいいほうよ」
「ありがとうございます!」
また一人、女子高生が喜んで去っていく。
「お、お願いします」
そしてまた一人。
気弱そうな子が私の前に座り頭を下げてきた。
自分で言うのもなんだけどどうして女の子というのは占いが好きなんだろう。
まぁそれで稼がせてもらっているんだから文句は言わないけど。
私はその子の小指に見える『赤い糸』を摘んだ。

「……あなた中学生よね?」
「えっ? あ、はい」
まぁ大丈夫だとは思うけど……。
「北。小学生に入ったかどうかってくらいの子ね。ま、頑張りなさい」
「あ、ありがとうございます……」
返事は小さかったけど不満には思っていないみたい。
いいお客さんでよかった。
たまに怒り出すお客もいるのだ。
まぁ20歳以上も年上のデブが運命の人だといわれたりしたら怒るのも無理はないけど。
ここまで言えばわかるかもしれないけど私は占い師をやっている。
成功率は100%。
うそ臭いかもしれないけどこれは確実。
だって……










私には『運命の赤い糸』が見えるのだから














私がそのことに気づいたのは5歳のときだった。
ふと何か糸のようなものが見えて目を凝らしたのが始まり。
傍にいた女の人の小指に一本の赤い糸が見えたのだ。
それはどこかに繋がっている様でピンッと張っている。
興味津々でその糸に触れると頭に男女の姿が写った。
そのうちの女の人の姿はその赤い糸が繋がっている女の人だった。
家に帰って母に赤い糸ってなにと聞いたのは今でも覚えている。
母はしばらく何のことだか考えていたが運命の赤い糸のことだと思い、私に話してくれた。
その意味を聞いた途端私は泣いてしまった。
一つは母の赤い糸が父と繋がっていなかったこと。
そしてもう一つ。






―――私の小指には赤い糸がなかった。











それからの私は男の人を好きになるということをしなくなった。
いくら自分が好きになってもその人は運命の人ではない。
そしてその人の運命の人は確かに別にいて赤い糸で結ばれているのだ。
恋愛話に入ってこない私にレズではないかという噂がたったこともあったが今となっては無理もないと思う。

―――両親は私の小学校卒業とともに離婚した。
やはり赤い糸で結ばれていなかったからかもしれない。
それを見て私が結婚することは一生ないなと思っていた。






中学卒業後、私は占い師になった。
安定しない職業ではあったものの母は反対しなかった。
私の力で助言し、運命の人との再婚を果たしたことで能力を認めていたからだ。
一応成功しているとは思う。
不安定な仕事にもかかわらず占い師の仕事だけで食べていけるし街中で自分の噂も聞いたことはある。
……でも『恋カラス』はないんじゃないだろうか。
確かに顔が見えないように黒いフードで隠してはいるけど。
私も女なわけでそんな呼び名というのは……。












「すいません。占ってもらっていいですか?」
……昔を思い出して周りが目に入っていなかったみたい。
さて、仕事仕事。
今度のお客さんは20代半ばくらいの男性。
私のほとんどのお客は女性だが稀にこういう男性も来る。
「あの……あなたが『恋カラス』さんですか?」
……結構広まっているのだろうか?
「……えぇ、そう呼ばれているみたいですけど」
「やっぱり。同僚に聞いた噂にそっくりだったので」
ずいぶん気さくな人だ。
はっきり言って私はこういう人は好きではない。
『赤い糸』によってなくした自分自身を見ているようだったから。
「それで……占うんですか?」
「あ、ごめんごめん。お願いします」
はぁ……さっさと終わらせよう。
そう思って彼の手を見た私だったが。
「……えっ!?」
思わず驚いて立ち上がってしまった。
顔を隠していた黒いフードが取れてしまっているにもかかわらず私は動揺していた。
もう一度目を凝らしてみたが確かにない。









―――彼の小指にあるはずの『赤い糸』が









今までこんなことはなかったはずだ。
動揺したままの私だったがまずは占えないことを謝ろうとした。
「ご、ごめんなさ……い?」
そこには私を見て固まっている彼がいた。
私にはなぜ彼が固まっているのか理解できなかった。
「あの……」
「可愛い……」
その言葉に私はキョトンとしてしまった。
占い師をやって早5年以上。
他人とあまりかかわりを持たなかった私にとってはじめて聞く言葉だったから。
「ねぇ、今彼氏とかいる?」
「い、いないけど……」
私には彼がなにを言いたいのかわからなかった。
「なら……俺と付き合ってください」
だからその言葉に対する私の反応は……。
「……え〜っ!!?」
驚くことだけだった。




それから―――








その場では断ったのだけど彼は機会があれば私にあいに来るようになった。
最初は鬱陶しく思っていた私だったけどしばらくすると彼が来るのを心待ちするようになっていた。
そのうち一緒に遊びにいくようになり、その年のクリスマス、私は彼から二度目の告白を受けた。
返事は……OK。

そして5年後……










「どうした?」
今も彼は私の傍にいる。
関係は変わり、今は私の夫として。
「私たちが出会ったときのことを思い出してた」
占い師は廃業。
理由は『赤い糸』が見えなくなったから。
私が結婚したのと同時にあの能力は消えてしまった。
あの力がなんなのか。
それは今でもわからない。
でもこれだけは言える。
『赤い糸』で繋がっていなかった私たちだけど……。
「俺はいつまでも愛しているぞ」
「私も……だよ」
運命なんて関係ない。
私たちは幸せだ。
 
 
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