t-onとは こんにちは、guestさん ログイン  
 
総合TOP | ユーザー登録 | 課金 | 企業情報

 
 
クリエイター名  azumi
滑稽な条件反射

 カチカチと音を立ててネジを回した。
 少しずつ重くなるネジの重みを感じながら、それでも最後まで巻き切って。
 指を離すと同時に耳に届く音色に、そっと瞼を閉じる。
 こうするだけで思い浮かぶ顔に、自然と頬は綻び口元は上がるんだ。

 速いテンポで流れる音楽は、何度か繰り返された後、徐々に速度を落としていく。
 やがて曲の山場を残して止まった音色。
 無意識にまたネジに指をかけて。
 カチカチとその音を聞いて。

 後何回こんな事を繰り返すのだろう。
 後何回でこんな事から抜け出せるのだろう。

「ずっと一緒だよ」
 そう言った彼の言葉を、こんな音色で思い出そうと必死で。
 同じ様に、彼の言葉をいい加減忘れてしまいたいと願っている。

 嘘つき。
 嫌い。
 大嫌い。
 そんな事を自分に言い聞かせては虚しさを覚えるばかりで。
 馴染み深いこの音色を耳にすれば、それだけで瞼に熱が込み上げる事も私はもう知っているのに。
 
 指を離すと同時に耳に届いた音色は、曲の山場から始まった。
 自然と思い浮かぶ、あどけない表情。
 優しい声色。
 そしてまた私の瞼は熱を浮かばせ、対照的に頬は綻び、口元は上がる。

 




 
 
 
©CrowdGate Co.,Ltd All Rights Reserved.
 
| 総合TOP | サイトマップ | プライバシーポリシー | 規約