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クリエイター名 |
azumi |
滑稽な条件反射
カチカチと音を立ててネジを回した。 少しずつ重くなるネジの重みを感じながら、それでも最後まで巻き切って。 指を離すと同時に耳に届く音色に、そっと瞼を閉じる。 こうするだけで思い浮かぶ顔に、自然と頬は綻び口元は上がるんだ。
速いテンポで流れる音楽は、何度か繰り返された後、徐々に速度を落としていく。 やがて曲の山場を残して止まった音色。 無意識にまたネジに指をかけて。 カチカチとその音を聞いて。
後何回こんな事を繰り返すのだろう。 後何回でこんな事から抜け出せるのだろう。
「ずっと一緒だよ」 そう言った彼の言葉を、こんな音色で思い出そうと必死で。 同じ様に、彼の言葉をいい加減忘れてしまいたいと願っている。
嘘つき。 嫌い。 大嫌い。 そんな事を自分に言い聞かせては虚しさを覚えるばかりで。 馴染み深いこの音色を耳にすれば、それだけで瞼に熱が込み上げる事も私はもう知っているのに。 指を離すと同時に耳に届いた音色は、曲の山場から始まった。 自然と思い浮かぶ、あどけない表情。 優しい声色。 そしてまた私の瞼は熱を浮かばせ、対照的に頬は綻び、口元は上がる。
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