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クリエイター名 |
今宮和己 |
サンプル
『春風のメッセージ』 <小学生コンビが主人公のほのぼのミステリー>
草のにおい。土のにおい。河原から吹く風が、あたしの大好きななつかしいにおいを運んできてくれる。 あたしはつい嬉しくなって、立ち止まってウーンと大きくのびをした。 「やっぱり春っていいな。なんだかふわふわした気持ちになっちゃう」 「若葉は春だけじゃなくて、一年中ふわふわしてる気がするけど……」 となりを歩いていた優くんが、ポツリと小さな声でつぶやく。 「ちょっと、聞こえてるわよ」 あたしは両手を腰に当てて、優くんをジトッとにらみつけた。 「え、いや、その……ゴメン」 優くんがうろたえてぺコンと頭を下げる。 その困った顔が可愛くて、あたしはクスクスと笑いを噛み殺した。 優くんはあたしの幼なじみだけど、昔から名前のとおり優しすぎてちょっと気の弱いところがあるのだ。 「もういいよ。でも、ホントいい気持ち!」 春は、あたしの一番好きな季節だ。あったかくって、目に映るすべてがふんわりと優しくって。 それになんと言っても今日は、あたしが五年生になった最初の日! クラス替えで優くんと同じクラスにもなれたし、今年はなんだかステキなことが起こりそう。 そう思った次の瞬間だった。 「きゃっ!」 急に強くなった風にホコリが舞い上がり、あたしはギュッと目を閉じた。 そして、再び目を開けると……。 「紙ヒコーキ?」 近くの木の枝にでも引っかかっていたのが、さっきの風で飛ばされたのだろうか。目の前を紙飛行機がフラフラと飛んでいたのだ。 今にも墜落しそうなその様子に思わず手を差し出すと、紙飛行機はあたしの手のひらにふわりと着地した。 手紙になっているのか、よく見ると小さく文字のようなものが透けて見える。昨日までの雨でちょっと字がにじんで紙にシワがよってるけど、なんとか読めそうだ。 でも……軽い気持ちで手紙を読み始めたあたしは、みるみる顔が青くなるのを感じた。 なんとそこには、こんなことが書いてあったのだ!
『私は十字架を刻み込んだ銃弾の前で、ひとり膝を抱えて震えています。お願い、だれか私を見つけ出して』
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