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クリエイター名  思遠
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今日はみるはバイトに行ったみたいで1人で部室に向かう途中。
 誰か一緒に行こうと思って、自販機前に橋鷹くんが来ないか遠くから観察してみたけれど、来ない。
 待ってても仕方がないので諦めて部室へ。
 もう部室に居るかも知れないし。
「こんにちはー」
「よう、白野」
「……………………こんにちは」
 橋鷹くんの反応速度が遅いのには慣れた。
 部屋へ入ると暁吏ちゃんが居ない。
 なるほど、今のところ女子はわたしだけ。
 今、……気づいたんだけど3年生が来る可能性低い。
 わ、ちょっとわたしのコミュニケーション能力低さに凹む。
 男子と話すのは【なんとなーく】苦手に感じる。
 話すのは諦めた方が良いかな。
 そもそも、わたし含めて3人ともあまりお喋りとか好む面子じゃない……
 橋鷹くんはテーブルを挟んだ、向かい側で携帯ゲーム機を手に握りしめている。
 双木先輩は部長席の目の前に置いてある机で勉強。
 時折、小さな音がするだけの部室内
わたしは本でも読もうかと思った。
 でも、やっぱりみるが持ってきたパズルをすることにした。
『遊んでもいいよ』と言われていたので挑戦してみる。
みるは自分で買ってきておいて一切手を付けていない。
 バイトやなんかで色々と忙しそうにしてる。
それに何より、難易度が高いものだから諦めていたりして……。
 ピースが小さい2014ピース木目柄パズル。
完成するとそれぞれ立体のタコとイカになるクリスタルパズル。
「どれにしようかなー」
3種類あるのでどれか選ぶことになる……
とりあえず難しいと思われる、木目柄は挑戦したくない。
どういう基準で選ぼうか。
「あっ、刺身で食べると美味しいほうにしよう……」
「じゃあ、イカ」
この場合たこ焼きは考えないことにした。
 そうして決まったのでイカのクリスタルパズルを手に取る
 置いたいったものは割と自由に使っていいという暗黙のルールがある。
何よりああ言ってたから大丈夫。
「これは、ピースが少ないから楽勝かも!」
「お? 何それ?」
 橋鷹くんに手元を覗きこまれ少し驚いた。
「えっと、これみるが置いていったパズルなんだ。組み立てるとイカになるの」
「この箱の写真のものが完成するのか」
『へぇー』と言いながら組み立てている途中のイカパズルを手に取る。
「全然、烏賊に見えない」
「これ台座だよ」
「……なるほど。完成にはしばらくかかるか」
「あ、ねえ? よかったら橋鷹くんもやりますか?」
「? 2人でどうやって?」
「実はお仲間にタコがあるんです!」
「ああ」
 納得したというふうに頷く。
「こっちをどうかなって」
「……」
 どうでもいいようなことで悩んでるのかもしれない。
 もしかしてタコよりイカがいいのかな?
「ちょっと違うけど、木目柄のパズルもあります!」
 シュッと箱に指をさす。
視界の端に入ったので、あえて別のも進めてみる。
 明らかに難易度が高くて面倒だから無意識にスルーしてた。
「え、これ小さいの?……」
 木目柄のジグソーパズルの箱を手に取り凝視している。
「箱自体が小さいからしかたがないんじゃないですか?」
「いや、ピースが多い」
指を差された箇所を見ると『2014ピース』という表記が目に入る。
「これって多いですか?」
 手に持ったその箱を開けつつ訊ねる。
「多いかどうかよりピースが小さい」
 中に入っているピースを取り出し、確かめてみる。
「ちっちゃい。なんか可愛いですね!」
「そうは思わない」
「でも、なくしたら捜索するのが大変だー」
「失くさないうちに片せ」
「そうします」
 蓋を閉じた。
「ちょっと待った!!」
「な、なんですか? 双木先輩?」
 急に声をかけられこちらのテーブルに移動してきていた。
何を『待った』なのか分からない。
「いったい、なんですか」
「それ俺が完成させて見せよう」
 今しがた閉めたはずなのに一瞬のうちに蓋が開けられてる。
「このパズルは難しい」
「へーぇ? 正気でしょうか? その言葉に後悔はございませんか?」
 思わず変な口調で問うてしまった。
双木先輩は妙なチャレンジ精神に溢れてるな、と思った。
「何故、言葉遣いがいつもと違う?」
「あぁ……気のせいですよ…………」
「いやいや、何らかの影響を受けたんじゃないのか?」
「いいえ……」
 あからさまに変だったけど認めたくないなぁ。
「しかしまあ、よくこんなに難しいのを買ってきたものだ」
「物珍しかったからかもしれない」
「ああ、お前たちじゃなくて……。川原だからな……」
 それでもどこか腑に落ちない様子を見せる。
「真白いのよりはマシですね。難易度的に」
「何気なくレアな代物で面白いとは思う」
「それにしても中途半端」
「ですよね! 完成しても、楽しめる絵柄じゃないですよ!!」
 橋鷹先輩の発言にフォローを入れる。
 たまに入れ損ねたり、斜め上の解釈になったりしちゃう。
「やるな、川原。人とは違う」
「あの? 人の話聞いてました?」
「聞いてた。レア感とそれを作った、無意味さが良い」
 いちいち質問しなくてもよかった。
そんなことわたしは知ってたね。
少々言葉足らず感がある。
まあ、こういう話しかたの人なのでしかたない。
「とりあえず作業場所確保しましょうよ」
「少し片付けるか」
「ピース失くすと困るから綺麗な方が良い」
 そうして床やテーブルのゴミを捨てる。
落書きされた紙を引き出しに片づける。
これでパズルのピースが落とした時に探しやすい。
どこかに行ってしまうという悲惨な事件は起きないはず。


「ふぃー終わった」
「そもそも始まってない」
 掃除が終わったって言いたかったのに
 そういっている間にテーブルに山が作られる。
その山を崩し均す。
「これだけ小さいと掴みにくいな」
 摘み上げ凝視している。
手が大きいと細かい作業がしにくい様子。
「難易度に比べれば、そんなことは気にならない」
「まずは、四隅と外側になるのから探しましょう!」
「それがオーソドックスなやり方。まあ、絵柄で判断して繋げても大丈夫そう」
「それじゃ、1か所に集めてから組み立てるぞ」
 
 
「もう、疲れましたー」
 もう集中力の限界。
 結構頭を使ったような気がする。
 どれくらいの時が経ったのか。
時計がある方を見やれば、大体2時間ほど経過していた。
「なるほど、言われてみれば、確かに結構な時間が経っている」
なんで黙々とやっていたのか急に疑問に思えてきた。
だって、眺めていても面白みが無いし。
パズルをやっているときの【なんかちょっとずつ完成している】感が薄い。
「あ、結構こういうのって時間忘れちゃいますよね」
「うん、そうそう。熱中しちゃうの何故だろう? 黙々とやってたのにさ」
話し始める。
するとノッってくるようだ。
あと楽しんでいるからかもしれない。
結果的に徐々にだけど言葉数が増えてくる。
つまりは反応の薄さが薄れてくる。
目に見えないハイテンションさを理解するのは慣れた人じゃないと無理。
「折角だから3人でこっそり完成させないか?」
「なんでですか?」
「え、そりゃ、3人でこっそりなにかやってる。ドキワクテカ感が楽しいからさ」
「そういうものですか? わたしは別にいいですよ」
『ドキ』って必要だったかな?
「俺も構わない。これ以上数が増えるとかえってやりにくいな。それに黙々とやりたいのに賑やかになりそうだ」
「じゃあ決まりです!!」
「で? どこに置くのか。保管場所を決めておいてくれないか」
「代来が置いてこいよ? ほら、よろしく頼む」
 逃げられないように襟首を掴む。
 橋鷹くんは気付くといなかったりゲームを始めていたりする。
 そのことを心得ているので対策を考えたと五十嵐先輩に聞いたことがある。
 実際にどうでもいいときだけ解放されている。
 いまはそうじゃないとわたしも思う。
「自分だけ真っ先に遊ばないでください」
「誰も触れない、高いところにでも置いておくか」
 棚の上を指刺す。
 わたしなら椅子を踏み台にしても届かない。
 手近なところに厚紙があったので制作途中のジグソーパズルを載せる。
「これなら途中からできますよね」
「それなら便利だな。使ってないピースは箱に戻しておけ」
『まともに頭を使っているな』と嫌味を言われた。
 ぼんやりしたへっこぽこだと思われてる。
 イメージを払拭できないかな。
 
 
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