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クリエイター名 |
小鳥遊美空 |
2
『単純なわたしと素直な世界』
満たされない想いを誰かで埋めようとした。 だけど充足感を得られた事なんて一度もなかった。 在るのは惨めなわたしへの自嘲と乾きだけ。 どんなに足掻いてみても世界は変わらない。 次第にわたしは溢れ出して行く希望や情熱という物に何の感慨も抱かなくなっていた。
「サキってさ、よく見たら可愛い顔してるよね」 だけど、そんなわたしを変えてくれたのはたった一言の友達の言葉だった。 自分でも、なんて単純なんだろう、そう思う。 それでも、世界はわたしが考えるよりも、もっとずっと素直な物なのかもしれない。 カズヤ君にもっと可愛いって思われたい。 カズヤ君にもっと可愛いって褒めて貰いたい。 カズヤ君にもっと可愛いって抱きしめて欲しい。
そうだ、世界が変わらないなら、わたし自身が変わるんだ。 新しい自分へ、新しい世界へ。 決意の朝、空がとても綺麗に見える。 こんなに青く澄んでいるなんて今まで気付こうともしなかった。 行ける、わたしは飛べる。 なりたい自分へなる為に。 今までなら着る事なんて絶対になかった服を買う。 可愛らしくフリルとリボンで飾られたモノトーンのワンピース。 袖を通し、鏡に映したわたしは別人に見える。 くるり、とスカートの裾を舞わせながらターン。 後は素直に伝えるだけ、精一杯なこの想いを。
「ねぇ、佐木、それ何かの罰ゲーム? や、男にしては凄く似合ってるけどさ」
馬鹿みたいだ。 カズヤ君の困ったような表情がわたしの胸を抉る。 凄く惨めで、悲しくて、辛くて、涙が溢れて止まらない。 「あのね、佐木。ぼくは飾らない君が好きだな」 そう言って、そっと撫でてくれる手が暖かくて、やっぱり涙が止まらない。 瞳を開けば、いつもと変わらない笑顔がわたしを迎えてくれる。 世界はわたしが考えるよりも、もっとずっと素直な物でよかった。
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