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クリエイター名 |
依 |
空転サイクル
☆空転サイクル
『────あー……』
銀色のピカピカ。 ぼくはそれをじっと眺めていた。 たまにそれは軽やかな音を立てながらクルクルと回って、またピカピカと輝いた。
『────あぁー……』
────すごいな、これ、なんだろう?
しゃがんでそれをジッと見ていたボクの鼻先を、銀色の光が掠めるように落ちた。
「やるよ」 見上げると、そこにはたくさんの包帯を巻いた彼が居た。 「それ、弟のなんだ。…………もう、誰も乗らないからやるよ」 少し曇った瞳で彼は言う。よく見れば、身体中あちこちに包帯が巻かれていて────それが強い風で少しほつれてはためいていた。
『…………そう、言われても』 ボクは戸惑って、足元に落ちた銀の鍵と、自分の掌を交互に見た。 「────お前……」 抉られた大地に、また風が吹き込む。迷い込んだ風たちはそこから抜けるために手を取り合い暴風となる。ぐるぐると土と埃を巻き上げながら空へと昇る風によって、また無造作に半分埋まった自転車の後輪がグルグルと回る。 『コレ、なんていうの?』 「…………自転車」 『ボク、コレ、乗りたい。乗り方教えてくれる?』 「────…………そうだな。ああ、いいよ」 ボクと彼との約束。それがボクに身体を与えた。一瞬、僕の胸の中の魂に異質なぬくもりを感じた気がしたけれど、それはすぐにボクの一部になった。 「よろしくね」 「ああ、よろしく────」 ボクは地面に落ちた鍵を拾って、微笑んだ。
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