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クリエイター名  佐伯七十郎
雨上がり

雨上がり



 ここのところずっと、外出するたびに傘を広げている。しとしとと降り続く雨の中、できることなら外出なんてしたくないのだが、学校があるためにそうもいかない。午前中に授業が終わったとしてもどこかに遊びに行くこともできず、私は早く家に帰ろうと急いだ。雨なんて、湿気で髪の毛は跳ねるし、服は濡れるし、いいことなんて一つもない。雨はただ、憂鬱なだけである。

 家までの近道である公園を横切っていて、私は失敗したと思った。柔らかな砂道に大きな水溜りができている。目の前に広がる小さな湖に、私は溜息をついた。戻って別の道を行こうかとも思ったが、その湖を越えれば整備されたコンクリートの道路に出るので、私は思い切って湖の中に足を入れる。危惧していたほどあまり深くはなかったが、それでもジーパンの裾は水に触れて、紺色が黒く変色してしまっていた。ついでに砂までもがしがみついてきて、私はイライラと裾を叩く。しかしその行為はただ私の手を濡らすだけだった。
 なかなか落ちてくれない砂に、私は諦めて歩き出した。道路に沿った家の庭から青い紫陽花が覗いている。雨に濡れて、他の植物はその雫の重さに暗く頭を垂れているのに、紫陽花だけは雨の中でも胸を張って咲いていた。彼らは雨の中でもよく映える。私は紫陽花のようにはなれないな。そう思うと濡れた裾がまた気になった。

 風の音が耳を横切って、私は空を見上げる。いつの間にか雨足は弱まり、風が重い雲を連れ去ろうとしていた。私はちょっとだけ悩んで傘を畳む。手を広げてじっとしていれば、未だ空から細い雫が落ちてきているのを知ることはできたが、歩いているだけでは気づかない。空では灰色の合間から青色が覗き始めていた。もう少し早く晴れてくれればよかったのに。私はどんどん近づいてくる自宅の屋根を見つめながら、溜息をついた。
 パシャンと音がして、私は足元を見下ろす。ずっと上を向いていて、道路にできた水溜りに気づかなかった。私はそっと、水溜りから足を抜く。

 水溜りに雲が浮かんでいた。

 見上げれば青空があり、見下ろしても青空がある。奇妙な感覚。足元にある空は少し黒がかっていたが、それでも青空だった。私はなるべく波紋を立てないように水溜りの真ん中に立つ。まるで空の上に立っているようだ。そんなことを思った。
 何だか楽しくなって、私はその場でくるくると回った。ジーパンの裾がたくさん水を吸って重くなったが、そんなことはどうでもよかった。今、私は空の上に立っている。そのことがとても楽しかった。家に帰るのはもう少し後でいい。

 雲の帽子を脱いで、太陽が顔を出す。暖かな日差しが降り注ぎ、私と紫陽花を照らした。




 
 
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