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クリエイター名 |
狐野径 |
サンプル文2 一人称
タイトル「旅する私の心」
私の名前は坂口 若葉。新緑の頃に生まれたから、若葉。一瞬単純だなと思ったけれど、わかりやすいし、年をとっても若い気持ちを忘れないかもしれないからいいなって考えた。 そんな先まで考えるつもりはなかったけれど、名前のことを考えると遠い未来を思う。 年を取った時のの私はどうしているのか? 考えているように生きられたのか? 病気していないか、事故に遭っていないか。 孫がいるのか夫がいるのか? そう、未来を考えるといろいろなそこまでの時間がある。 そもそも、考えるのが早すぎるのかもしれない。まだ、高校生なのだから。 考えるときは決まって道を歩いている時だった。 学校の往復、街歩きをしているときなど心が無になっているとき。あれこれ考えたら無じゃないから、無じゃなくなるように考えるのかな? 街歩きは好き。 できれば旅に出たいけれど、高校生だと限度がある。 自転車でなんとか縦断の旅というのも手だけれども、怖い。ちゃんと泊まるところが決まっていればいいけれど。冒険心があるような、ないような。 近所の寺社も公園も見方を変えれば観光地なんだと気づいたの。だって、観光スポットと言ったら寺社と公園でしょ? え? 詭弁? でもなんでもいい。私が楽しいと思うこと、旅の気持ちが味わえればいい。 アルバイトでお金ためて卒業旅行はしたいと考えていたよ。 そして、それからいろんなことがあって今がある。
私は自分のいたところと違う世界にいる。 幸いにして言葉が通じた。習慣も違うところはあっても、外国を旅しているくらいの差だった。それに、右も左もわからない私を助けてくれた人たちがいたということは重要だ。 その人たちがいなければ、私は死んでいたか、死ぬよりもひどい目に遭っていたかもしれない。 旅に出て同郷の人を探すの面白いと思った。ただ、街道には動物よりたちが悪い魔物がいる。 街道を歩くのも安全じゃない。ううん、多少の危険は「安全」となってしまう。野生動物が出るかもしれないし、盗賊に遭うかもしれないし魔物に遭うかもしれない……出現頻度が低ければ安全。 でも、もともとの世界だって安全ではない。交通事故や強盗だっているんだし。毎日学校に行くのだって、電車に乗って相当遠くだった。それだって、どこで事故に遭うかなんてわからなったんだもの。 私は思った、怖がって出かけないのもつまらない、もったいないと。 だから私は歩く。馬に乗る練習をしたし、仲間もできた。 いずれ、元の世界に戻ったとき、家族に友達に土産話ができるように。 私が突然行方不明になって驚いただろうから、まずは心配してくれてありがとう、というだろう。そして、謝罪もしないといけない。 頑張ってこられたのはみんなに会いたいと思ったからだし、あっちの世界で助けてくれた人たちがいたから、と伝えたい。伝えるためには生き延び、世界を渡る道を見つけないといけない。
そうだよね、また、会う時まで。 涙は取っておくよ。悲しみではなく喜びのために。
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