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クリエイター名 |
紺野ふずき |
コメント |
紺野と申します。オチ、テンポ、読後感の三つに重点を置いて、お話を作っています。一人称をご希望の際は、ご指定くださいませ。【得手】ほのぼの、癒し、恋愛、動物、不条理怪奇、和、悲哀、もどかしい恋心、漢の友情、人情、食えないカップルの会話、艶っぽい男女関係、傭兵、主従関係。 |
サンプル |
サンプル1
『最後の餞』
その犬はムクといった。いつも玄関でゴロゴロしている老いぼれの黒い雑種で、俺は正直、そいつがいなくてもいいと思っていた。 若い時分はよく飛びかかってきて制服を汚されたり、買ったばかりの新品の靴をかじられたりした。俺はそれがイヤだった。 就職して初めての夏、東京へ出た俺は実家へ数日の里帰りした。見慣れた玄関。いつもならそこにいるはずのヤツがいなかった。お袋が戸を開けながら言った。 「お前が行って直ぐだったよ。十一年……もうおじいさんだったから」
サンプル2
『朱いかんざし』
店の軒先での出来事だ。 江戸は日本橋の織物問屋『大河屋』に、信州岩村田の六三郎という百姓がやってきた。この店の奉公人、利助の母が腰を痛めて動けないと言う。六三郎は利助の故郷の知り合いだった。話しを聞き礼だけ言って返そうとすると、大旦那である三代目大河屋孫右衛門は、反物の端切れにくるんだ一両を利助に手渡し「渡してやれ」と目配せした。頭を下げてそれを受け取り、利助は六三郎を呼び止めた。 奉公へ出る前、畑の芋を盗んでは追いかけられた六三郎のその背中は、しばらく見ない間にすっかり縮んでいた。九才だった利助も十六才になっている。背もとうに六三郎を追い越していた。怒られて怖々と見上げていた顔は、利助の視線の下にある。随分と長い間、故郷を離れていた事に改めて気づかされた。 六三郎は差し出された物が何かすぐに分かったらしい。首を振りながら、歳とった目を細めて笑った。
『嘘』
『嘘』
雨の日。 髪がまとまらない。 イラついて、母方の親戚を一人殺した。
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