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クリエイター名  真野かおる
コメント   真野かおると言います。和風の歴史、伝奇物が得意です。人間模様、恋愛物なども好きです。
ファンタジーでも何でも、等身大のキャラクター描写を心がけてます。不慣れなうえ日々精進ですが、宜しくお願い致します。
サンプル サンプル1

 チリン………と、澄んだ鈴の音が小さく聞こえてきた事に、とよは首を傾げて後を振り返った。
 歩いて来た小径は、鬱蒼と茂る木々が黄昏の薄闇を一層濃くして、手に持つ提灯の灯りも頼りなく思えるほどだった。
 肩を震わせて、抱える風呂敷包みを持つ手に思わず力が入る。あの茂みの向こうの、濃い闇から怖いものが飛び出してきそうな、そんな錯覚さえ覚えた。
 誰か、木陰にでも隠れて脅かしているのではないかと、じっと闇に目を凝らすが、猫一匹茂みから飛び出して来る気配もなければ、小動物が動いている様子もない。
 とよは、小さな唇を何かを堪えるようにして噛みしめると、止めてしまっていた足を再び動かした。
 向かう先は、奉公先の屋敷である。大店の隠居が暮らす別宅に少女は奉公していた。大奥御用達の看板を掲げる小間物問屋大坂屋五郎左右衛門と言えば、江戸の商人達の間でも有名であった。商売上手の上に、公儀重役達らとそつなく付き合い、店を大きくした。その五郎左右衛門も、一度病に倒れてからは、店を息子に譲って、堀川の別宅に移り住んでいた。

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