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クリエイター名 |
shura |
コメント |
はじめまして。普段はどこかネジのはずれた名もなき登場人物たちによる現代短編とショートショートばかり書いているライターです。 情熱的な恋愛、SF等専門知識を要するもの、熱血に限らずスポーツ全般は不得手ですが、愛情だけは詰め込んで頑張らせていただきます。三人称を主に、読みやすくかつ面白い文章を心がけて書かせていただいております。よろしくお願いします。 |
サンプル |
月への回帰?T:一人称による表現
月への回帰?T 一人称による表現
中天の月は夜目の利く僕には眩しいくらいに、闇に沈んだ人気のない街を駆ける僕の足元を煌々と照らしている。僕はそのあまりの明るさに何故か息がつまり、ともすれば立ちすくんでしまいそうになるのを必死にこらえながら、ただひたすら夜道を一人走っていた。石畳を蹴る音がやけに耳につき、他の音が何も聴こえてこないことに焦りを覚える。まだ僕の身体に”実体”がなく、しかし四本の足で檻の中を歩き回ってはフィルター越しにあの月を見上げていた頃は、こんなもどかしさを感じたことなど一度もなかった。 「それはお前がこの世界の”一部”に組み込まれたからだ。今までのお前は言わば、この世界にとって”部外者”だったからな。お前はこの実体のある世界ではない別の世界に生まれ、一度死に、そして”ここ”に新たに生まれたことで初めてこの世界の一部になったのさ。特異な存在ではあるがな。」 そう言った人間を探して僕は夜の街を駆け回っているが、未だその姿を、僕は見つけられずにいる。今の僕は、月の光にあたると銀色に輝く灰色の毛皮ではなく、太陽の下で金色にも見える明るい色の髪を持ち、鋭く大きな牙の代わりに心細く思えるくらい小さな犬歯と、地面に真っ直ぐに立つ尾のない身体で、”人”としてこの世界に生きており、昔のような鋭い嗅覚や聴力はすっかり失ってしまった。 だから僕はこれほど不安なのか、それとも、あの真っ黒の空に浮かぶ鏡のような月が、不甲斐ない今の姿を映しては僕にいやというほど見せ付け、不安にさせるのか――。
月への回帰?U:三人称による表現
月への回帰?U 三人称による表現
爆音を伴った一瞬の強い風の中でも、その男は着物をはためかせ、真っ直ぐに立っていた。夜の闇より黒い髪は逆巻き、くわえた煙管から出る紫煙は糸をひくように夜空に向かって長く長く伸びていたが、男はただ目を細め、身じろぎもせずにそこに佇んでいる。まるでこの世に怯えるべき物などないとでもいうように彼は、目の前の”現象”を揺るぎない瞳でじっと見守った。 ”それ”は創生神の鍋からすくい上げて宙に落としたような、混沌とした一つの塊であり、絶えず姿を変えては光ったり音をたてたり、風を吹いたりしている。 「お前は逃げ出したいのか、この街から?」 ”それ”から強く吹きつける風にかき消されそうな――だが、落ち着いた揺らぎのない声で男が”それ”に向かって言う。
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