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クリエイター名 |
池澤まゆり |
コメント |
池澤まゆりです。西洋風ファンタジー(ファンタジー恋愛もの含む)が得意です。逆にミステリーやホラーはほとんど書いたことがありません。ギャグも書きますが基本はシリアス、恋愛ものは甘めです。文体に少々癖がありますので、必ずサンプルをご確認の上で発注してください。できるだけお客様のご要望にお応えできるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。個室→http://omc.terranetz.jp/creators_room/room_view.cgi?ROOMID=2916 |
サンプル |
サンプル「レイヴン・ウィシュ」
夜空の下のバルコニーで、彼女は一人溜め息をついていた。 明日はエドッグ伯爵家の息子と彼女の婚約披露パーティが開かれる。伯爵の息子は道楽息子だとの噂があり、顔を合わせたことのある彼女もその噂は正確だと思う。当然のように彼女は婚約に乗り気ではなかった。だがこの没落しかけた家を立てなおすには、力のある貴族と結婚せねばならない。 ありがちな理由だが、これが婚約を決めた最大の理由ではなかった。彼女の家の家宝が何故かエドッグ伯爵家の手に渡っていたからだ。数年前に彼女の屋敷から盗まれた黒い宝石レイヴン・ウィシュ。行方知れずだったその宝石を、エドッグ伯爵は明日のパーティで披露すると公言したのだ。最大の家宝だったレイヴン・ウィシュを取り戻すために彼女は婚約した。 (レイヴン・ウィシュ……どうして私の手元にあってくれないの?) 彼女は自問した。レイヴン・ウィシュには言い伝えがある。それを所持する人間を幸福へと導くという言い伝えだ。実際、その言い伝えは正しいものだったように思う。レイヴン・ウィシュが盗まれる前は彼女の家も力ある公爵家として国の重要な地位にあった。だが盗まれてからというもの、彼女の家は突如態度を翻した宰相によって陥れられ、父はその騒動に巻き込まれ命を落とし、母はその一年後に流行り病で亡くなった。数年で彼女の家は没落寸前にまで追い込まれたのだ。 レイヴン・ウィシュが盗まれさえしなければ、今も彼女は両親と共に幸せな生活を送っていたのかもしれない。そんなことをぼんやりと考え、彼女は再び嘆息した。父と母が大切そうに飾っていた黒い宝石。それを最後に見てから、もう数年の時が経っている。
サンプル「彫像」
少女は自ら彫り上げた彫像を見て、溜め息をついた。彼女が作っていたのは恋人の彫像だった。三年前に戦争へと行ったきり返ってこない恋人。 戦争は半年前に終わった。彼女の家は戦火に晒されることもなく、いつもと変わらない毎日が過ぎていくだけの三年間だった。 彼女は三年間、ひたすら恋人の彫像を彫り続けた。何体も作ったわけではなく、一体に三年の時間を費やしたのだ。三年間彫り続けられた石には埃すらつもりかけている。だがこの像はいまだ完成していない。 少女が覚えている恋人の肖像。それを完璧に彫像にすることができないのだ。表情のところで、彫る手がどうしても止まってしまう。いくら精巧に似せたつもりでも、彼女の心が違うと叫ぶのだ。彼はこんな表情はしなかった、彼はもっとみずみずしい表情で笑うのだ――と。 彼女は再び彫り始めた。理想の彫像に少しでも近づけようと、一心不乱に。 不意に、背後の扉が開いた。どうでもいいものであればすぐに彫りに戻るつもりで、彼女は扉に一瞥をくれた。
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