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クリエイター名 |
JOEmasa |
コメント |
簡潔な文章を用い事実と事態を書く事で、 人物が人物であるための心情を描きたい。 |
サンプル |
額縁の向こうの彼女
『額縁の向こうの彼女』
鰯雲の狭間から夕暮れ前の光が漏れだし、濃い青が顔を覗かせていた。 僕は雑多な商店街からそれを見上げ、静かに足を止めた。 甲高い声を上げながら白く鋭い鳥が一羽、遠くの山へ飛び去っていった。
仕合
『仕合』
夜、通りには人一人いない。 いや目が慣れてくれば、二人の男がそこに見える。 身動きしない二人が、手に刃を持っている。
二人の雨
『二人の雨』
笠を目深に被った男は、降りしきる雨の中でじっと突っ立っていた。 薄く雨音が続くだけで、辺りは静寂と言える。 使われることのなかった大道芸の道具が、一層音を消して見えた。
愛せない身体
『愛せない身体』
久しぶりに会った彼女は、痩せこけた頬で弱々しく笑みを作っていた。 僕はそれに力なく手を挙げることしかできず、気付かれないように少しだけうつむいた。 約束した喫茶店は大して混み合っておらず、僕達は通りに面した小さな席に着いた。 ガラスの向こうで行き交う人々を眺めていると店員が来て、まだ注文が決まっていないことを聞いて不機嫌そうに去っていった。
雲間へ
『雲間へ』
視界は白と灰に満ち、溢れかえる機器の作動音をしんしんと降る雪が吸っていた。 荒廃する環境と枯渇する資源に刃向かうように技術は進歩し、今はもう人がこの冷たい空気を感じることも、機械が駆動を難とすることもない。 そこまでして殺し合いがしたいかね、頭の中に浮かぶ自嘲を押し殺すたびに、この戦闘服で遮られたはずの薄ら寒さを、俺は感じていた。
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