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クリエイター名 |
溌麻冬鵺 |
コメント |
冬鵺です。 普段はオリジナルのノベルやゲームを公開しています。 現実の世界をよく書きますが、どこか不思議で、少しもの悲しかったり、切なかったり、幻想的だったりする話を綴っています。重めの話が多いように思われます。 |
サンプル |
あちらがわ
その夢は不意に現れた。
一 一八八二年Bの月二十八日
僕は恐らく、人生というものに嫌気を感じていたのでしょう。名高い学院に通っていましたし、その上学院でも優秀な成績を収めていたものですから。大概の学問が僕の前に置かれましたが、どれも僕にとってはすぐ解ける謎のようなものだったのです。友人達も僕の頭脳に敵わなかったようで、心中彼らを軽蔑しているところがありました。向かうところ敵なしと言えば聞こえはいいのでしょうが、世界が灰色に見えるだけで楽しいことなど見付かりません。少々、飽き飽きしていたところでした。 そんなときでした。教授が僕にそこの話をしたのは。
戦場
ここは戦場だ。 彼は息を詰めてそう考えていた。 あちこちから沸き起こる悲鳴の数といったらない。 猛スピードで動く物体が殆どで、ゆったりと動くものはまず少ない。 隙が多すぎる、と彼はそののんびりしたものを睨みつける。 油断なく彼は進んでいく。
星喰らい
わたしのすんでいるところはとてもあついしまです。しまぐにの中の、みなみのほうにあるしまに、おとうさんとおかあさんとわたしがすんでいます。すこしはなれたところに、おばあちゃんもすんでいます。おじいちゃんはいません。でもおじいちゃんは、わたしにあきをくれました。あきは白いくまのぬいぐるみです。 ある日学校にいかなくてもよくなりました。先せいはむずかしいかおでむずかしいことをおはなししていました。わたしはがっこうがお休みになったのがうれしかったけれど、おとうさんもおかあさんもかなしそうにしていました。おとうさんもおしごとにいかなくてよくなったみたいでした。わたしはみんなでどこかにいきたいとおもっていたけれど、あきをつれていってそとであそんでいました。いえをでるたびにおかあさんはしんぱいそうにわたしを見ました。そしてそのうち、そとであそんじゃだめといわれました。 わたしのすむしまからはほしがよく見えます。まい年、七夕にはみんなで空を見ます。そとであそべなくなってからはおばあちゃんのうちにいくくらいで、よるになってからはすることもありません。わたしはおばあちゃんにもらったほしぶどうをたべながら、ほしぞらを見るようになりました。よくわからないけど、そらがくらくなっているとおもいました。おとうさんとおかあさんにそういうとこわいかおをしたので、もうはなさないようにしました。 おばあちゃんはいつもすわっています。ほしぶどうばかりたべています。おばあちゃんのちかくではくろいねこがまるくなっています。わたしはおばあちゃんに、いったことのないゆきぐにのおはなしをしてもらうのが大すきでした。おばあちゃんはもともとさむいところにすんでいて、なにかのせん手だったとおかあさんからきいたことがあります。しゅ目の名まえはむずかしくておぼえていません。おもいだそうとしてはしっぱいします。このまえ、みせて、とおばあちゃんにたのむと、ここはあついからできないねえとわらっていました。あついところでしかできないきょうぎはないのに、さむいところでしかできないきょうぎがあるのはつまらないとわたしはおもいました。 おじいちゃんはわたしがようちえんにいるときになくなりました。五さいのおたんじょう日にあきをくれてすぐでした。おそうしきでわたしはたくさんなきました。おとうさんやおかあさんやおばあちゃんがしんでしまったらあんなふうにいっぱいなくとおもいます。あきはしなないけど、でもはなればなれになったらかなしいとおもいます。しななくても、あたらしくおなじぬいぐるみをかっても、それはあきじゃないからです。わたしはおばあちゃんのうちにいくときも、あきをもっていきました。おうちにかえるときはおばあちゃんが、わたしとあきのぶんといってほしぶどうをもたせてくれます。うけとるときにはすこしおおいなとか、すくないなとかおもうのに、あまったり足りなかったりすることはいちどもありません。それはおばあちゃんが、わたしのしらないまほうをつかっているからだとおもいます。そういうとおばあちゃんはわらっていました。まほうをつかえることをひとにはなしてはいけないんだとわたしはかんがえました。くろねこをかっているのがなによりのしょうこだとおもいます。 よぞらがくらくなっているのは、ほしが見えなくなっているからでした。ほしはすごく大きいというけれど、ちきゅうとぷらねたりうむのちがいもよくわかりません。ほんとうはこんぺいとうみたいに小さくて、だれかがばりばりとたべているんじゃないかとおもいます。そこでわたしははっとしました。おばあちゃんだ。おばあちゃんがほしをぶどうにかえて、むしゃむしゃとたべているのにちがいない。大はっけんです。わたしはどきどきしてねむれませんでした。
A氏の場合
A氏という友人がいる。 彼と僕とは同級生で、クラスが同じになったことはなかったがそれなりに親しく付き合っていた。恐らく、柔道を共に習っていたからだろう。 冬の寒い日などは裸足になるのが辛かったものだ。冷え性の僕はよく彼を追いかけてはその素足を踏んでいた。A氏は「NO〜!」といったような悲鳴をあげながらジャンプして逃げる。ジャンピングホッパというのも彼の自称だ。 その彼と久し振りに会った。僕は驚愕した。 A氏の顔色は人のものとも思えないくらいに青く、彼を見たものの脳にturn paleという熟語をひらめかせるくらいであった。しかし、体調を崩したというのでもないのだそうだ。彼は記憶通りの声音で何でもなさそうに語った。 「いやー、いいバイトがあってね」
白
彼は完全さを求めていた。 そのためになし得ることを静かに実行するだけの意志も、 彼は持ち合わせていた。 「それは僕にとって自然な欲求で、 それなくしては生きられないほど大事なものなんです」 笑ってそう答えるのが彼の常であったが、
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